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西精工株式会社

技術者にも求められる、伝える力と人間性当社には優れた技術者を認定する「技術マイスター制度」というものがあります。我々のビジョンである「ファインパーツの創造」に貢献できるスキルを有する技術者、と社内で定義付けています。 ただ、選ばれるのは「技術」が素晴らしいだけでなく、マネジメント能力やコミュニケーション能力があり、何よりも「こんな人になりたい」と周囲から認められる憧れの存在である必要があります。 現在、2名の社員がこの技術マイスターに認定されています。

総務部 部長
森住 実
平成元年(1989)年入社、現在60歳。入社後、労務関係の業務に従事。現在は経理にも携わる。
課題
経営は順調だが、職人気質の社員が多く、コミュニケーションが不足気味。工場内も整理整頓できていなかった
改善策
採用
●地元学生の採用に力を入れ、毎年、8~10名程度を継続的に採用
●採用時には、経営理念を理解し同じ価値観のもとで行動できるかを重視する
●原則、禁煙者のみを採用(喫煙者に関しては禁煙を促す)
育成
●新入社員にはメンター制度を実施
●入社前・入社後・外部研修を行うとともに、社外での資格取得もサポートする
●「道場」と呼ばれる機械についての勉強会では、機械のことを知らなければいい製品は生まれないと、一度機械をばらして組み立てるところから勉強する
●朝礼にて経営理念の唱和をするとともに、フィロソフィーをもとにテーマ決め、50分程度のグループディスカッションを実施
●毎月1回、社長講師によるリーダーシップ勉強会は全社員が受講
●毎月1回、部課長以上でマネジメントレビューを行う
●年2回、社員評価制度で振り返りを実施する
●技術者のマイスター制度を実施。技術もさることながら、人に教える技術、まわりから尊敬される人格が必要とされる
定着
●入社1年目に、仕事内容や部署について自己申告制度あり
●ES調査(社員幸福度調査)を定期的に実施
●サマーパーティーや忘年会、バーベキュー大会、「コンパ」など社員や社員の家族も交えて交流会を開催
●とくしまマラソンに社長・社員が参加。走らない社員もボランティアで参加
●プラチナくるみんマークを取得済み
●障碍者雇用を積極的に行っている
成果
社員幸福度97.5%、「第3回日本でいちばん大切にしたい会社 中小企業庁長官賞」「平成25年度おもてなし企業選」など選出
企業ストーリー

ゴミが落ちている製造現場に、危機感を抱く

 西精工株式会社は1923(大正12)年、ボルトの製造販売を行う「西製作所」からスタートした。第二次大戦後、欧米輸出用のナット製造に転換し、順調な事業拡大で国内めねじ業界では小径六角ナット生産量第1位、溶接ナット生産量第2位のメーカーにまで成長した。創業者である西卯次八氏は、社員との関係性を大切にした。工場内には『卯次八専用いす』があり、社員が働く様子を眺め、声を掛け、集金で他県を訪れた時は手土産を買って帰る、そんな大家族主義の持ち主だった。しかし、現社長である西泰宏氏が代表に就任した1998年当時、会社の雰囲気は変わっていた。森住さんは「業績は悪くありませんでしたが、会社の雰囲気はあまり良かったと言えないかもしれません。現場の技術者は職人気質で、仕事さえしていれば文句はないだろうという考えが強く、すれ違ってもあいさつをしない。床にゴミが落ちていても拾わない、といったことがありました。」と当時を振り返る。「特に工場が清潔でなければ、精密で高品質な製品はつくれない。そんな現状に現社長は危機感を持ったのでしょう。」
 まずは、製造の要である工場の雰囲気を変えることから、改革は始まった。

創業の精神と経営理念、フィロソフィーの策定

 西社長はある勉強会で経営理念の重要性に気付いた。「良い品を、より安く、より早く」という従来の社訓は社員の働く意識を変えるものではない。そこで創業からの思いを引き継いでいる現相談役の父とともに合宿を行い、新たに創業の精神・経営理念を作り上げた。「形として出来上がった経営理念を、どういう風にすれば社員の腹の底にまで落とせるかを考え、まず始まったのは朝礼です。朝礼で毎日唱和を繰り返しました」と森住さんは当時を振り返る。さらに、フィロソフィー委員会を立ち上げ、2009年に200にわたるフィロソフィーを作り上げた。
現在、西精工の朝礼は1時間以上行われる。創業の精神やフィロソフィーを元にテーマを決め、毎朝50分以上グループで話し合う。最初は、社員も何を話したらいいのか分からず会話が続かなかったが、あきらめずに何年も続けるうちに、少しずつ自分の思いや意見を伝えられるようになった。「今では、全員が活発に意見交換します。グループ内での意見がまとまったら、全体で発表する。さらに、それが共有されより深い洞察へとつながります」と森住さんはその意義を説明する。

対話重視の人材育成が高品質の製品を生み出す

 西精工の人材育成のキーワードは「対話」だ。朝礼から始まり、勉強・研修会、部会、全てに必ず対話の場が設けられている。顧客の細かな要望に応え、独自性のある高精度・極小のファインパーツを製造するには、技術者同士や営業と製造現場の相互理解が必要。日頃から対話で相手の意図を推し量り、自分の意見を伝える訓練が有効だと森住さんは言う。「営業が取ってきた仕事に対し、製造側が『いっしょに製品化しよう』という気持ちを共有できなければ、良い製品は生まれません。お客様の意図が現場の技術者に伝わってなく想定外のものができる、技術者同士の意思疎通がうまくいかず不良品がでてしまう、私たちはそんなコミュニケーション不足が一番の仕事の無駄だと考えています。」
こうした対話も創業の精神のひとつである『人間尊重の精神』が浸透し、『相手を認める』という社風が定着しているため、上下関係なく自由闊達な意見交換ができているそうだ。

大家族主義がもたらした社員幸福度97.5%

 創業の精神にもある『大家族主義』を実践している同社。昨年12月に行った、5回目となる社員幸福度調査の結果は、97.5%が「幸福」であると回答した。森住さんは「わが社ではES調査の『満足度』を『幸福度』に名称を変えて実施しています。質問に『月曜日、出社するのが楽しい(ワクワクする)』とありますが、この質問はなかなか他社にはないと思いますよ」と笑う。社員の回答内容について毎回、1年かけて係長以上が話し合い、職場改善に努めている。そのためか、毎年の離職率は数%に留まっている。
こうした取り組みが評価され、同社は「第3回日本でいちばん大切にしたい会社 中小企業庁長官賞」や「平成25年度おもてなし企業選」など数々の賞を受賞している。

「世界一キレイな工場にしよう」という5Sスローガンが掲げられ、工場内には実際にゴミひとつ落ちていない

全社員がミッションステートメントを作成、全員でいつでも見えるように掲示

毎年行う、サマーパーティーは社員の家族もあわせ参加者300人以上

会社はこう変わった

全社で喫煙者ゼロを達成 年2回の人事評価の際は、個人評価に加え所属するチームについても評価される。約20チームほど存在するが、1チームにつき3時間かけて社長が面接を行う。チームへの評価は、経営理念に対する取り組みが中心。仕事で得た成果がどう理念に結びついているかによって評価は変わる。結果が出ても理念が達成されていなければ評価は低い。 そんな西精工には、さらに、驚くべき取り組みがある。毎年行う、サマーパーティーや忘年会は社員の家族もあわせ300人の参加者を超えるが、ある時、忘年会に参加できない子育て中の社員から「子どもたちを連れてくることができれば参加できるのに」という声があがった。ではどうしたら子どもたちが一緒に来られるのか…と考え、禁煙運動に取り組み、当初99名もいた喫煙者が禁煙を成功させ、現在、喫煙者はゼロとなった。

今すぐできるはじめの一歩! 1.朝礼を有効に活用し、経営理念の浸透を図りましょう
2.対話の機会を設けて、社員の自主性やコミュニケーション能力を養いましょう
3.定期的に社員の職場に対する満足度、幸福度をアンケート等によって定量的に測りましょう。

企業データ

企業名:西精工株式会社
住 所:徳島市南矢三町1丁目11-4
設 立:大正12年4月  資本金:3000万円
従業員数:234名(平成28年12月現在)
http://www.nishi-seiko.co.jp/
【事業内容】
ナット類を中心としたファスナーやパーツ類など金属部品の製造・販売。ファインパーツと呼ばれる、独自性のある高精度・高品質・極小の製品は、世界中の自動車、家電などの電気製品、住宅設備・建設機械、ゲーム機などあらゆる業界から評価を受け、採用されている。近年は、新素材による製品開発や極小部品の開発にも取り組んでいる。

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