朝倉染布株式会社

定着
女性のキャリア・技術を磨き、高付加価値商品を世の中へ

 私が入社した当時から上司部下の関係がフレンドリーな会社でした。そんな社風だったからこそ、今社員たちが取り組んでいる様々なプロジェクトでもチーム内で協力し合い、問題が発生しても解決に向けて積極的に知識・情報を交換し合い、達成することができるのでしょう。ベテラン社員は若手社員に技術を教えることに抵抗がなく、教えることでまた自身の勉強にもなります。  また、当社の変革の契機の一つとなったのが現社長の入社です。総合商社で海外勤務などを経て2003年に入社しましたが、育児休業制度や新賃金・人事考課システムなど人材活用のための様々な制度を構築していきました。先代が培ったフレンドリーな社風と新たな制度が上手く相乗効果を発揮し、当社の躍進の源泉になっていると思います。

企業ストーリー

きっかけ

女性による細やかなチェックが必要な検査工程

 奈良時代から絹織物の産地として知られた群馬県桐生市で1892年創業した朝倉染布株式会社。125年という歴史を誇り、新たな染色技術に挑戦し続け、発展してきた。現在では、吸水速乾加工や超撥水加工技術に定評があり、水着やスポーツウェアなどの加工を通じてトップアスリートの挑戦を支援している。
 染色加工を担う同社にとって重要な業務フローの一つが「検査」だ。これは染色工程の最後に商品に汚れやキズがないか、長さや密度は基準をクリアしているかを検査するもので、検査基準は得意先ごとに変わる。目視による細かなチェックが必要なこの業務は女性に向いた職場で、一人前になるには5年以上かかるという。しかし、職場改革が始まる今から約20年前は同社の女性の平均勤続年数は7.1年と低く、結婚・出産を機に退職する社員がほとんどで、恒常的な人的損失を抱えていた。

改善策1

女性の活躍を推進することで、多能工化も促進

 そこで他社に先駆けて、2004年に男性の育児休業を促進する休暇制度を新設。また、参観日など学校行事への参加もしやすいように有給休暇を時間単位で取得できるようにした。さらに、翌2005年には出産による育児休暇は3歳まで、小学校就学前まで短時間勤務を可能とした。
 女性活躍を目的としたこうした取り組みには、思わぬ副産物もあった。「基本的に休暇中の欠員に人員補充はしません。職場の業務を見直し、どうすれば少人数でも対応できるかをみんなで考える。また、事務方が製造現場をサポートするなど、社員の多能化が進みました」と、社員のスキルアップにつながったと言う。

改善策2

プロジェクトチームを通じた、社員発信による幾つもの取り組み

 同社の特徴的な取り組みの一つに「プロジェクトチーム」がある。
 例えば、2003年5月には労使でプロジェクトチームを立ち上げどうすればより良い退職金制度になるか協議。企業型401Kを導入するとともに、定期的に運用状況を会社がフォローしている。
 人事考課のプロジェクトチームでは、透明性と公平性を確保した人事考課システムを構築。年3回三者面談を行うことでコミュニケーションを図り、従業員の不安や悩みを解消している。
 同社の技術力の象徴でもあるのがバケツ1杯分の水を包むことができる撥水風呂敷『ながれ』だ。もともと定評のある撥水加工に超がつく仕上がりで、50回の洗濯後も効果が持続し災害時にも活躍する商品で、メディアでも盛んに取り上げられ、2011年度グッドデザイン中小企業庁長官賞を受賞した。
 自社販売製品開発プロジェクトはこうした同社の誇る撥水技術を生かし、アームカバーやレインコートなど新商品を次々とリリースしている。今は売上の15%程度を占める自主販売商品だが、こうした社員からの提案制度もあり、その割合は年々拡大している。

成 果

女性のキャリアアップに成功、平均勤続年数が男性を上回る

 「今までで一番効果があったのは『コストダウンプロジェクト』です」と大塚部長代理。5年継続したこのプロジェクトは、自分たちでコストダウンした額を賞与として還元される仕組みで、コストダウンを図るターゲットから数値目標、手法などを社員がチームに分かれ設定し、1年間活動する。その成果はコストダウンにとどまらず、各社員の業務への知識向上や情報の共有、相互理解もすすんだ。「普段現場で生産に携わっている人間が、はじめてパワーポイントを使用したり、プレゼンをするなど学習効果がありました」と大塚部長代理は振り返る。
 同社では2003年以降、出産をした女性全てが育児休暇を取得。今では、女性の育児休暇取得が当たり前となり、女性の平均勤続年数は2016年で18.6年と大幅増加。男性のそれを上回っている。また、検査部署に所属する社員の9割が女性、さらに0人だった女性のリーダー職が4割と、女性が活躍する企業へと変貌をとげた。

キャリアを積んだ女性による細やかなチェックが必要な検査工程
メディアにも盛んに取り上げられている撥水風呂敷ながれ
撥水風呂敷ながれで2011年度グッドデザイン中小企業庁長官賞を受賞

朝倉染布株式会社

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