若者の採用や定着に成功している元気な企業を紹介。人づくりの情報を収集したい企業の皆さんのためのサイトです。

一度失敗した新卒採用。受け入れ体制を整備し、再開へ。

株式会社世起

新卒採用の失敗が、組織をより強くする契機となりました。最初に新卒採用を始めた当時、私は専務。実は、父でもある当時の社長(現会長)と育成方針について摺り合わせが十分ではありませんでした。当時の私は、2代目として「先代を超えなければ」という意識が強すぎ、会社のビジョンも定まらず、社員たちも困っていたようです。次第に「先代のカリスマ性にはかなわない」との思いに至り、先代の良い点を継承しつつ、社内のルールづくりに注力しました。経営理念の確立もその一つ。徐々に組織の整備は進み、再び新卒採用を再開することができました。

代表取締役社長
今村暢秀
高校卒業後、菓子メーカーを経て、包装資材会社に勤務。1992年に世起に入社。1998年に専務取締役、2011年に代表取締役に就任。
課題
商品の開発力を高めるために若手人材が必要であった。
改善策
採用
・2006年から新卒採用を始めるものの、育成の目途が立たず3年間で中止。受け入れ体制を整備した上で、2010年に再開。
育成
・ブラザーシスター制度を導入し、前年に入社した先輩が後輩を教育。
・裁量権を与え、プロジェクトのなかで経験やノウハウを身に付けさせる。
・愛媛県中小企業家同友会の勉強会に社長とともに社員も出席。
・新入社員1人でも入社式を実施。全社員が育成の意識を持てるよう工夫。
定着
・3年をかけて、2007年に経営理念と経営計画を確立。
・鍵山秀三郎氏の「掃除に学ぶ会」にならい、環境整備(掃除)に力を入れる。
・社内のコミュニケーションを図るために「ハイタッチ挨拶」を実施。
・意見やアイデアの出やすい風通しのいい関係にするため、社長も役員も社員も、全員が「さん」づけで呼ぶ。
成果
新卒者が開発チームに入り、開発のスピードがアップ。市場への商品投入数も多くなった。
企業ストーリー

業績悪化を経て、加工から製造へと業務内容をシフト

株式会社世起の代名詞でもある「黒ごまきな紛げんこつ飴」。2001年に販売が開始され、全国菓子博覧会で金賞を連続受賞。折しもの健康ブームにも乗って、その名声を一躍高めた「世起」だが、ここに至るまでには紆余曲折があった。
1970年に創業した世起は、当初、お菓子とおもちゃを仕入れ組み合わせる加工業や、お菓子の販売代理店を生業としていた。バブル期には時代背景に後押しされ工場を拡張、2交代制でも生産が追い付かないほどだった。しかしバブル崩壊を受け業績が不安定になり、リストラも経験。社員数は約6割に激減。これまでの経営方針を見つめ直さざるを得なくなった。
世起では、これまでの加工業からお菓子自体の商品開発・製造に注力。こうした背水の陣で販売したのが「黒ごまきな紛げんこつ飴」だった。次なるヒットのために―。若い柔軟な発想が必要であると考え、世起では2006年に新卒採用に踏み切った。

新卒採用を実施するも失敗。他社事例を取り入れ受け入れ体制整備。

しかし、当初の狙いは思い通りに進まなかった。3年連続で新卒を入れたが、受け入れ体制が整わず、あえなくストップ。苦渋の決断だった。
今村社長は内部改革に取り組んだ。3年かけて経営理念と経営計画を立案した。経営理念を立案する際、今村社長が大切にしたことがある。それは、社員一人ひとりが仕事の意義と目的を明確にできること。そして、会社から社員への一方的な押し付けにならないこと。経営理念を発表した際には「この経営理念が世起に合わないと思った際は、意見を言って欲しい」と伝えた。
社風を醸成するために他社の良い事例も積極的に取り入れた。愛媛県中小企業家同友会の勉強会に社員とともに積極的に参加。鍵山秀三郎氏「掃除に学ぶ会」に習った環境整備(掃除)活動や、社員間のコミュニケーションを高めるための「ハイタッチ挨拶」も、この勉強会から学んだ。

新卒採用を再開。裁量権を与え、経験のなかで育成。

 そして、3年間ストップしていた新卒採用を再開する。内部の受け入れ体制が整い、会社の持続的な発展を考えての決断だ。当初の狙い通り、新卒者は開発部門に配属。ブラザーシスター制度を導入し、前年に入社した先輩が後輩の面倒を見る。この間、後輩は日報を書き先輩に報告。そのなかで後輩はもちろん、先輩の方にも責任感が育まれるという。
 今村社長の育成方針は「まず、やらせること」。裁量権を与えて経験を積み、そのなかでノウハウを身に付けさせる。新卒を採用することで、そのサイクルが上手く回るようになったという。

離職率ほぼゼロ。開発スピードがアップ。

「もともとアットホームな職場の雰囲気には誇りを持っていました。昔から社長も役員も分け隔てなく全員が"さん"づけで呼んでいます」とその社風の良さを自負する今村社長。その証か、同社には20年戦士のパート社員が4人もいる。さらに、経営理念の立案をはじめとした内部改革によって「美味しいお菓子を提供する」という仕事の目的が明確化、社員のモチベーションも向上し、離職率はほぼゼロが続く。何よりも新卒者が開発チームに入ったことで、開発のスピードがあがり、市場への商品投入数も多くなった。
「常に社員が得するように考えている」と今村社長。若い開発チームを中心に、「黒ごまきな紛げんこつ飴」に続くどんなヒット商品が生まれるか楽しみだ。

経営理念を全社員に浸透させるため、毎朝唱和している

清掃に力を入れており、社内のみならず敷地外も定期的に社員が清掃

自社オリジナル製品をPRするため、様々な展示会にも積極的に参加

会社はこう変わった

新卒で入社した社員を中心に商品の開発能力が向上。現在、世起の開発チームは3名。長年、同社の開発を支えてきたベテランスタッフが1名とここ数年で入社した2名で構成される活気溢れるチームだ。若い感性を存分に活かし、商品開発に注力。開発のスピードは各段に向上した。「市場への商品投入数が業績に反映されるのはまだまだこれから」と語る今村社長だが、実践のなかで開発チームの個々のスキルは確実に成長。手応えを感じる日々だという。

今すぐできるはじめの一歩! 1.社員全員が考えを整理し、心を穏やかに保つために、積極的に清掃活動を行いましょう。
2.社員全員を「さん」づけで呼ぶなど心の垣根を低くし、お互いを尊重するための仕組みを作りましょう。
3.例えば「ハイタッチ挨拶」など社員間のコミュニケーションを高め、職場を活性化するための工夫をしましょう。

企業データ

企業名:株式会社世起
住 所:愛媛県伊予郡松前町北川原1240-1
設 立:1970年10月 
従業員数:32名(2013年11月現在)
【事業内容】
菓子製造業、食品加工業、菓子卸業

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年1月)の情報です。

▲ページのトップへ戻る