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半世紀に渡り培った教育制度が育む「期待をこえる感動」

島根電工株式会社

若手主体で会社のビジョンやビジネスモデルを構築する。島根電工は電気設備工事、上下水道・冷暖房設備工事を中心とした会社ですが、技術は日進月歩。いつかそのような設備工事が必要ない時代が来るかもしれません。新しい時代に向け、会社をどうしたいかというビジョンは、社長ではなく若い社員が考えること。そのためにもしっかりとした教育、安心して働くことができる環境が必要だと思っています。

代表取締役社長
荒木 恭司
1972年入社。出雲営業所長を経て、1989年取締役、1996年常務取締役就任。公共事業中心の経営の先行きに不安を感じ、小口工事・提案営業に経営の舵を切った。2010年代表取締役社長就任。
課題
バブル崩壊後公共事業の減少、労働環境の悪さによる高い離職率が続く。
改善策
採用
・しっかりとした教育を前提としているため、人間性を重視した採用を実施。
・育児が終わったタイミングなど、正社員を望む女性パートスタッフを正社員雇用する等、柔軟な採用方法を取り入れる。
育成
・先輩社員が新卒社員をマンツーマンで担当するビッグブラザー制度(B・B制度)を実施。
・考える力を養い、お客様をいかに感動させるかを考える「感性を磨く研修、感動研修」を実施。
・独自の研修制度を確立。入社1年目で4回(述べ30日)の泊まり込み研修を実施するほか、2年目に3回、3年目に3回と成長段階に合わせて研修実施。
定着
・会社として大切にする順位の第一を「社員とその家族」と位置付け。
・育児休暇・介護休暇を制度化し、休暇が取りやすい風土づくりを実施。
・勤務時間中に育児に関わる休憩時間が取れるようにするなど、社員の育児を応援。
・旅行や運動会など社内行事の充実。
・挑戦を奨励し、失敗を責めない風土づくりを経営者自ら実践。
・利益は賞与でしっかりと還元(2013年度実績:約6カ月分)
・社員持株制度を奨励し、社員自らが会社の株主という意識の醸成(8割以上の株が社員による保有)。
成果
年商144億円達成。売上の半分を個人向けの小口仕事や提案工事が締め、安定した経営基盤を確立。平成25年度おもてなし経営企業選選出、中国地域ニュービジネス大賞受賞。
企業ストーリー

バブル崩壊後に吹き荒れた公共事業に対する逆風。「大きな企業ほど先に潰れる」という危機感

 島根電工株式会社は1956年創業。地域住民なら誰でも知っている地元企業として、順調に成長してきた。かつては社内で“件名工事”と呼ぶ大規模な公共工事を中心に経営は安定しており、小さな個人向けの仕事は“雑工事”と呼ばれ、件名工事の片手間に行われる程度だった。
しかし、1990年代始めにバブルが崩壊。政府は公共工事の圧縮の方針を打ち出し、マスコミは連日“公共工事は悪”と言わんばかりの報道を続けた。当時、同社の売上の90%が公共工事。現在の代表取締役社長である荒木氏は、こうした状況に危機感を感じ、個人向け工事に目を向けた。
「小規模な個人向け工事をかき集めたらどうなるんだろう、と思って試算してみたんです。結果、大きな仕事が半分になっても十分やっていけると判断しました。」当時は営業課長だった荒木氏は、さっそく現場責任者に“諸口(小口の意味)班”の設立を進言した。返事は「そんな仕事は手が空いた時にやるから」とけんもほろろ。役員の反応も冷ややかだった。「大きな仕事はなくなります」と訴えても、「うちが潰れるわけがない、と。理由は“大手だから”。ただそれだけ。何の根拠もなく信じ込んでいた」それでも荒木氏は熱心に訴え、ようやく諸口班が設立された。
 その後、諸口班は「住まいのおたすけ隊」へ発展。個人宅の電気工事や水回りのちょっとした問題を解決するサービスが好評を呼び、今では全国にフランチャイズ展開。同社の事業の大きな柱となっている。

ビッグブラザー制度をもとに、独自の研修システムを確立。

 島根電工には、創業以来続く「ビッグブラザー制度(B・B制度)」という新人教育制度がある。新卒者にはマンツーマンで先輩社員が付き、仕事から私生活に至るまで何でも相談に乗り、新生活のスタートをサポートするシステムだ。社会人としての基盤を形成していく上で、非常に有効なシステムだが、こうした制度がありながら、かつては離職が続いた。
「現場の仕事は、体力的にハード。いわゆる3Kというやつで、定着率は悪かった。30人採用して、10%残ればいい方。技術の継承という問題もありますから、このままではお客様に安定したサービスを提供できない。」そう考えた荒木氏は人材の育成と定着に力を注いだ。
 ビッグブラザー制度で培ってきたノウハウをもとに、独自の研修プログラムを構築。入社1年目には、まず20日間泊まり込みでの研修を行い、その後3か月毎に2泊3日の研修を3回行う(1年目述べ30日間)。さらに2年目、3年目は4カ月に1回のペースで行う。計10回の研修で、生きがいや夢、お客様をどう感動させるかなどをしっかりと考えさせる。研修を繰り返し行うことで若いうちに目標、夢を見つけ、技術や資格、社会人としてのマナーを習得。さらに若手以外の30代~50代社員にも各部門別に研修を行い、理念の徹底とモチベーションの維持を図った。

より良いサービス提供のために、進化するスローガン。

 前述のように、同社は電球の交換や水漏れ、詰まりなどごく小さなサービスにも対応する「住まいのおたすけ隊」を柱として成長を続けている。これはスローガンである「期待を超える感動」がお客様へ届けられている1つの証拠だろう。
「もとは“期待と感動”というスローガンだったのですが、リッツ・カールトンホテルの本に出会い、今のスローガンへ進化しました。」
 荒木氏を感動させたリッツ・カールトンのエピソードとは、「営繕係が両手のふさがったお客様のドアを開けて差し上げた、それを見た社長は言った『ドアを開けただけでは、お客様さまは“満足”するだけ。お客様でさえ気づかないニーズに気づき、先回りすることで“感動”するんだ』と」。このくだりに共感した荒木氏。さっそくスローガンを「期待をこえる感動」とし、2011年より「感動研修」を実施して社員に徹底した。
「どうしたら期待を超える感動を与えられるか。相手の立場に立ち、求められるもの、喜ばれることを一生懸命考えてもらいます。」
そのためには、相手を思う気持ちと、豊かな想像力が必要となる。同社の研修では、感性を磨き、右脳を働かせることで創造力を養う、独自のプログラムが実施されている。

売上高の半分が個人向けの仕事に。リピート率は90%以上。

 「住まいのおたすけ隊」では、利用後のお客様にアンケートを実施しており、その結果の素晴らしい社員を表彰する。リピート率90%以上という反応を見れば、ほとんどのお客様に満足、感動を与えているといっていいだろう。
「島根の県民は70万人を切っています。“人の少ないところで、なんでそんなに仕事があるんですか?”とよく聞かれますが、お客様の期待以上の仕事をすれば、依頼が途切れることはありません」。荒木氏の思いは、社員にもお客様にもしっかりと届いている。

グループスローガンは『期待と感動』から『「期待」を超える「感動」を!』に進化

小集団活動を推進。本音で語り合える場が用意されている

「あなたの元へ」というキャッチコピーには、「お客様に感動をしてもらいたい」という思いがこめられている

会社はこう変わった

離職率は1%以下。ベストセラービジネス書にも登場。 ベストセラービジネス書“日本でいちばん大切にしたい会社”でも紹介された島根電工。「大切なのは、1番に社員とその家族。2番にわが社に関連する会社の社員とその家族。3番はお客様。4番は地域社会。5番は株主」荒木氏はそう言い切る。お客様を笑顔にするには、まず社員の笑顔を作らなくてはならないと考える。社員教育にかける費用は年間1億円を超える。育児・介護休暇やノー残業デーの設定など、働きやすい環境作りにも心を砕く。 「地域貢献とは雇用を増やすこと。雇用した人が安心して人生を送れるようにすることが会社の使命。リストラは絶対にしません。」 その真摯な思いが、離職率1%という事実に繋がっている。また同社では独立のためなどで退社した人材も大切にし、良好な関係を保っている。

今すぐできるはじめの一歩! 1.会社が最も大切にするのは“社員”であることをはっきりと伝えましょう。
2.失敗をしても、むやみに怒らず、どんどんチャレンジする体質づくりをしましょう。。
3.自社にとって適切な社員育成ができているか研修・教育制度を見直しましょう。

企業データ

企業名:島根電工株式会社
住 所:島根県松江市東本町5丁目63
設 立:1956年4月 
従業員数:330名(グループ総従業員数520名)
http://www.sdgr.co.jp/
【事業内容】
電気設備、エンジニアリングサービス、空調設備工事、給排水衛生設備、水道施設工事、下水道施設工事、通信設備工事、消防施設工事、計装システム設備工事、新エネルギー・環境設備工事


※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年12月)の情報です。

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