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幹部の離職による倒産の危機を乗り越え、「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」受賞

大豊産業株式会社

技術よりも人間性を大切にした経営を心掛ける。経営の究極の目的は、従業員の物心両面の幸福。そのためには従業員の職務能力はもちろんのこと、人間性を高めることが不可欠です。『人づくり』とフィロソフィーを経営の根幹に据え、その理念を社員が地道に高め続けてきた結果、「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」の受賞に繋がりました。

代表取締役社長
乾 篤之
1948年徳島県徳島市生まれ。66歳。芝浦工業大学卒。横河電機など他社で研鑽を積み、1973年に大豊産業へ入社。1989年に先代社長である父親から引き継ぎ、代表取締役社長就任。
課題
新規分野への参入に反対した管理職の退社により、倒産の危機に陥り、人間性の大切さを痛感。
改善策
採用
・3年~5年先の人員計画を作成。過不足の無い人員配置を行う。
・JICA民間ボランティア制度を活用。海外青年協力隊を経験し、チャレンジ精神に富むグローバル人材を採用。
・団体競技スポーツ経験者、協調性、リーダーシップのある人物を採用。
育成
・フィロソフィー手帳の作成。高めるべき人間性を列挙し、行動の規範とする。社員は毎日の反省点を手帳と照らし合わせ、報告する。
・地域社会貢献活動への積極的な取り組み。
・チャレンジシート、ランクアップノートで年間、月間、週間、毎日の目標を管理。上司がコメントを付け、部下と成長対話を行う。
定着
・経営理念の作成。会社が社員の物心両面の幸福を目指すことにより、社員も顧客や取り引き先を大切にするように。
・くるみんマーク取得。育児休暇、看護休暇などを導入、ガイドブックを配布し、周知を徹底。仕事と家庭の両立を図る。
・経営陣と社員がコミュニケーションを積極的に取り、自由闊達な意見が飛び交う企業風土を醸成。
成果
売上高100億円の大台到達。先細りが予測された電力中心の経営方針からの脱却、業務内容の拡大。
企業ストーリー

幹部の離反、独立。社内でも孤立し、眠れない日々。

 高松市に本社を置く大豊産業株式会社。省力化関連事業、インフラ整備関連事業、新エネルギー関連事業の3つを柱とし、順調に業績を伸ばしている専門商社だ。元々は電気機材卸売業として、先代が1949年に創業。二代目となる乾篤之社長は大学卒業後、他社で数年の修行を積み、27歳で入社。当時は、創設者の人間力、高度成長期の後押しもあり「黙っていても仕事が入ってくる」時代だった。  
 乾氏は1989年に2代目社長に就任。当時、売上の8~9割が電力関係を締めており、業績自体は順調だった。しかし、1994年、電気事業分野の規制緩和があり、これをきっかけに会社を揺るがす事件が巻き起こる。
 売上のほとんどを電力関係に頼る現状に危機感を覚えた乾社長は、新規分野への参入を決意する。だが、電力関係の窓口として活躍していた役員がこれに反対し、数名の社員を引き連れ退職、独立してしまう。時を同じくして先代も亡くなり、残された社員たちは大きく動揺した。取引先をはじめとした周囲にもあらぬ悪評がたち、乾社長は社内でも孤立してしまう。「針のむしろでしたね。夜も眠れない日が続きました」。煩悶する日々の中で、乾社長は「自分の脇の甘さ、社員との対話不足、そして、経営とは技術よりも人間性である」ということを痛感したという。

5S+あいさつの徹底。職場環境の整備は企業活動の原点

 「経営とは人間性」そう痛感した乾社長は、まずは自らの人間性を高めるべく、知人の紹介を得て京セラの稲盛和夫会長が主催する「盛和塾」の門を叩いた。盛和塾は、経営者の王道を学ぶ、企業家のための経営塾である。稲盛会長の話を吹き込んだテープを経営講話テープ集をむさぼるように聞き、目からウロコの連続だった。盛和塾で教えるのは”人間としての考え方を立派にすること“。人づくり=人間性を高めよう、という稲盛会長の薫陶を受け、乾社長は経営理念の作成に着手。”人づくりを通じて、会社は全従業員の物心両面の幸福を目指し、社会に貢献すること“を究極の目標として設定した。そして、まず自らの人間性を高めるべく、朝一番に率先してトイレ掃除を始めた。しかし、一連の騒動のため社長不信に陥っていた
社内の反応は冷ややかなものだった。「社長のひとりよがり」という声さえあがった。それでも乾社長は、一人黙々と掃除を続けた。その熱意は徐々に伝わり、1人、2人と手伝う社員が現れ、いつしか社員全員が掃除をするようになった。」。同社では5Sとあいさつを”環境整備=環境を整えて仕事に備えること“として、企業活動の原点と位置付けている。また環境整備の徹底を通じて、利他の心(人を思いやる優しい心)を育み、心(謙虚、感謝、反省、素直)を高め、創意工夫や改善に努めるよう指導している。
 乾社長は「経営状態の良くない会社は、掃除やあいさつ等の基本的なことができていないことが多い。そういう観点からも、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底していこうと「社内、綺麗でしょう? 今はみんなで朝、雑巾がけしています。あいさつも笑顔で大声でしてますよ」と乾社長は胸を張る。

フィロソフィー手帳に基づいた行動ができているか?

 地道に環境整備を続けていくことで、少しずつ社内の雰囲気は良くなってきた。さらに「社員がガラっと変わった」と乾社長が語るのが「片手に数字、片手にフィロソフィー」と同社が謳う、“フィロソフィー手帳”。乾社長が盛和塾で学んだ、高めていくべき人間性を列挙したものだ。同じベクトルで活動し、幸福で素晴らしい人生を歩んでいくための心の座標軸として、全社員が携帯している。この手帳により、同社が究極の目標として掲げる「全従業員物心両面の幸福を目指す」ことが社員に浸透し、トップと社員の信頼関係が生まれた。「会社は社員の幸せを求めている。そう言われて悪い気がする人はいませんから。じゃあ頑張ろうって」。
 さらに、フィロソフィー手帳は日々の業務の中でも活用される。同社は社員には優しいが、数字には非常にシビアだ。物心両面の幸福を目指すには、数字は不可欠。チャレンジシート(年間目標管理)、ランクアップノート(月間、週間、日々の目標管理)で目標売上、行動予定、結果を厳しく管理する。その中でフィロソフィー手帳が活躍するのは、ランクアップノートにある“反省”の報告欄。1日の行動を手帳と照らし合わせ、フィロソフィーに則った言動ができているか振り返る。このことにより、社員1人1人へ経営理念の浸透が実現している。またランクアップノートには上司からのコメント欄が設けてあり、ノートを通じた“成長対話”で、部下の成長を促すシステムとなっている。

売上高100億円突破。新規分野の売り上げ割合が大幅に増加。

 乾社長の就任当時、売り上げの8~9割は電力関係だったが、現在では3割ほどに。規制緩和による売上減を危惧し、変革を図った乾社長の計画は成功した。「人間力=営業力。例えば他社と同じ商品を提案した時、“あなたから買うよ”と言ってもらえる人間的な魅力。ここはウチの強みです」。クライアントとの信頼関係を築くうえでも、同社の推進する“人間性の向上”が功を奏したと言えるだろう。

「四国でいちばん大切にしたい会社大賞の受賞」は、小さな努力の積み重ねの結果と乾社長

大切にしている環境整備の一環としての周囲の清掃活動。社員の表情もイキイキとしている。

社員が自らの行動を照らし合わせる「フィロソフィー手帳」。理念の浸透には日々の活用が役立っている。

会社はこう変わった

「パパ、ママの会社で働きたい!」と言われる会社へ。 大豊産業では、社員の家族も参加できる海外旅行を実施している。「社員の子どもさんに“パパ、ママの会社に行きたい”と言われるというのが夢なんです。そのためには、あらゆることを叶えてあげないと来てくれませんから」。また忘年会で立ち寄った飲食店で「こちらの社員さんは、愚痴や批判がまったくない。前向きな発言ばかり」と驚かれたという。「社員に“幸せです”って言われると本当に嬉しい。経営者冥利に尽きますね」と乾社長は語ってくれた。

今すぐできるはじめの一歩! 1.5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)、あいさつを徹底しましょう。
2.例えば社員手帳などを通じて、経営理念や社員一人ひとりの目指すべき姿を、
 全社員と常に共有しましょう。
3.年間の目標を月間、週間、毎日の予定へ落とし込み、振り返りを徹底しましょう。

企業データ

企業名:大豊産業株式会社
住 所:香川県高松市屋島西町1902-1
設 立:1949年10月  資本金:171名(2014年10月現在)
http://www.taihos.co.jp/
【事業内容】
電気・通信・土木関連の設備機器材料の販売、工業用計器・測定機器・制御機器・分析機器・コンピューター機器の販売、オートメーション設備の設計・施工・保守、電気・通信・土木関連設備の設計・施工・保守、新エネルギー関連(太陽光、LED等)の販売・設計・施工・保守

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年10月)の情報です。

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