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採用母集団を増やすことで採用時の人材レベルが向上、離職率の低減にも。

株式会社つるや

全ての答えは現場に落ちている某ドラマのセリフのようでが…(笑)。当社の役員がいつも口にする言葉です。小売業である当社にとって、お客様と直接接する現場はもちろん大切ですが、私のように人事をあずかる者にとってもそれは同じです。私は3ヶ月に1回、90店舗以上ある全店を回ります。現場のスタッフと顔を合わせて話すことで、職場改善のヒントや各スタッフの体調、人間関係など様々な情報をインプットします。手前味噌かもしれませんが、こうした地道な取り組みも当社の低い離職率を支えていると思いますよ。

管理部 マネージャー
岸慶太
1973年生まれ40歳。大学卒業後、大手流通会社に入社。1999年に株式会社つるやにパートとして入社、1年後に正社員に。店舗店長等を経て2005年に管理部に異動し人事を担当する。
課題
母集団が少なく求める人材が採用できず、離職率悪化の遠因にも。
改善策
採用
・15年前から継続的に新卒採用。
・3年前から複数の就職ポータルサイトに出稿。合同説明会や大学での交流会にも参加し、露出を高める。
・会社説明会には若手社員も参加。
・説明会ではネガティブ情報も必ず伝え、ミスマッチを防ぐ。
育成
・新人は正社員の教育ができる先輩がいる職場に配属し、OJTで教育。
・定期的に経営陣主催の勉強会を実施。
・1年目は毎月1度研修を実施、役員から社会人としての心構え、コミュニケーションの方法を学ぶ。
・2年目は2ヶ月に1度、リーダーとして店舗をまとめる手法を学ぶ。
・3年目は売上向上や経費削減の方法など、店舗の具体的なマネジメント法を学ぶ。
・幹部候補にはアメリカ西海岸や東南アジアなどのショッピングセンターを視察する海外研修へ派遣。
定着
・異動の際の引っ越し費用は全額会社負担。家賃も8割が会社負担。
・管理部のスタッフが3ヶ月に1度は全店舗を回る。
・年2回の賞与以外に、4年連続で決算賞与を提供。
・フットサルサークルなど、いくつかのサークル活動を実施。
成果
採用母集団が拡大し人材レベルが向上、定着率UPにもつながる
企業ストーリー

継続的に新卒採用をするも、母集団が少なく求める人材が採用できず。

創業110年を超え、地元では「靴が欲しければ、つるやに」そんな消費者も多い。1993年には100円ショップで有名なダイソーとフランチャイズ契約。デフレ経済のなかで消費者のニーズに応えるかのように出店を続け、現在では中四国に97店舗を展開する。ただ、店舗数を増やすためには人材も必要となる。同社では1990年代後半から新卒採用を続けてきた。しかし、その認知度、活気ある店舗からは想像しづらいが、決して採用活動は順調ではなかったという。
「以前は学生のエントリー数が非常に少なく、しかも若手の離職が少なくありませんでした」と岸氏。3~5名の採用人数に対し、エントリー数は10~20名程度。会社説明会を実施せず、一度の個別面談で会社の説明と選考を同時に行い、合否を決めていた。当然、採用する人材のレベルを下げざるを得ない時もあったという。

就職ポータルサイトの有効活用、イベント等への参加でエントリー導線を増やす

そこで岸氏は採用方法を根本から考え直した。母集団を増やすために複数の就職ポータルサイトに出稿。各種機能を駆使し、様々な検索軸でヒットできるよう工夫した。合同説明会や大学が主催するイベントにも積極的参加。学生との接触を増やし、地道にエントリーへの間口を広げていった。
採用フローにも変更を加えた。まずは自社の会社説明会を実施。1次はグループディスカッションを、2次では適性検査を、3次で役員面接を実施するようになった。複数回の選考で同社に対する学生の理解は進み入社への動機づけは高まった。さらに「会社説明会では職場のネガティブな情報もきちんと伝えるようにしています。例えば、小売業なので土日は休めない、忙しい時には残業もある、当社では転勤もあるなど。お互いが納得して次のステップに進めるようにしています」と岸氏。エントリーが増えたからこそ、こうしたネガティブな情報も選考の初期段階できちんと伝えることができるようになった。

「社員は息子」、伝統として続く社員愛

「社員を大切にする姿勢は創業以来の伝統です」と岸氏。実は同社の本部がある自社ビルはかつて寮だった。大切に受け継がれている経営理念には「社員を息子、娘と思い…」という一文がある。県外への転勤がある同社では、引っ越し費用はすべて会社もち。家賃も8割が会社負担。仕事に打ち込みやすい環境を作るためだという。
その手厚いサポートは新入社員に対しても同様だ。社会人として立派に成長できるよう、3年目までは階層別にしっかりとした研修を行う。1年目は毎月1度、社会人としての心構えやマナーを学び、2年目はリーダーとして店舗をまとめる手法を、3年目は店長として売上向上や経費削減の方法など、店舗における具体的なマネジメント法を学ぶ。数年に1度は将来を期待する幹部候補を海外視察にも派遣。こうした教育体制で成長した社員は、早ければ入社2年目から、遅くても3年目から店長を任せられる。

母集団は3~5倍に。離職率は業界で群を抜くように。

改善策が実を結び、母集団は飛躍的に拡大した。3年前と比較してもエントリー数は3~5倍に。比例するかのように人材のレベルも向上した。
 一方で「選考時に学生としっかりと向き合うことでミスマッチが少なくなり、離職率も低減しました」と岸氏。同業他社の中でも、離職率の低さでは群を抜く。特に新卒社員の3年以内離職率はほぼゼロが続く。「人事は会社の顔。会社は人事採用の担当者で決まると思います」と同氏。会社の方向性を常に把握し、定期的に現場をくまなく視察、採用プロセスの改善に尽力してきた岸氏の力も、同社の採用、定着力の向上に大きく貢献しているのだろう。
創業110年の老舗つるや。しかし同社は留まることを知らず、今もなお成長途上にある。

「どんなに忙しくても年に数回は全店舗を回ってスタッフと会話をする」と岸氏

合同説明会の場では、できるだけ丁寧に、会社の情報をオープンに説明する

2012年にオープンしたダイソー松山湊町店

会社はこう変わった

継続的な出店・増収が続き、4年連続で決算賞与を提供母集団が拡大することで、コミュニケーション能力と協調性の高い人材が採用できるようになった同社。入社数年後には店長を任せられる同社にとって、優秀な人材の採用は優れた店舗運営に直結している。また、人材の流出も少なくなり現場の力は確実に向上している。そのためか同社は増収が続き、2000年当時と比較して売上は3倍超。年2回の賞与以外にも、4年連続で決算賞与を提供している。

今すぐできるはじめの一歩! 1.説明会や選考時にはプラス情報だけでなく、マイナス情報も伝え、ミスマッチを事前に防ぎましょう
2.応募者に対して、人事担当者は会社の「顔」と考え、会社の方向性を常に把握してブレない発言をしましょう
3.経営陣や人事担当者は、社員(パート、アルバイトも含む)に、時間を作って声をかけましょう。

企業データ

企業名:株式会社つるや
住 所:愛媛県松山市湊町3丁目8-12
創 業:1902年
設 立:1948年6月  資本金:9800万円
従業員数:700名(うち正社員48名、2013年12月現在)
http://www.try-group.co.jp/
売上高:81億6411万円(2013年2月実績)
【事業内容】
靴および関連商品の小売販売/33店舗(つるや、シューズカンパニー、アスリートロッカー、リーガルシューズ、アウトレットトライ、ザ・シューズ)、雑貨の小売販売/60店舗(ザ・ダイソー)

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年1月)の情報です。

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