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社員間の関係性の質を改善し、情報の共有と問題解決能力を高める。

株式会社スワニー

海外拠点においても社員を大切にする日本型経営を実践。2009年に社長に就任したときから私は自分のことを「社長」ではなく「社員長」と呼んでいます。これは、社員の代表として社員本位の経営をしたいという想いから。社員を大切にする経営は海外の拠点でも発揮しています。2011年にカンボジアに新工場を設立したのですが、識字率67%と言われる現地の社員のために通称「寺子屋」と呼ぶ言葉を教える教室を設置。社員食堂も設け、出張の際は私も一緒に食事をしています。

代表取締役社長
板野 司
1963年生まれの50歳。大学卒業後、高松市内の総合アパレル商社に入社。トップセールスマンとして活躍していたが体調を崩し、それまでの数字本位の営業スタイルを考える契機となる。1993年に(株)スワニー入社。主に営業畑を歩み、2007年に常務取締役、2009年に代表取締役社長に就任。
課題
入社後すぐに海外配置となり、平均3~4年勤務。それが要因となり離職率が高かった。
改善策
採用
・グループワークを重視し、時間をかけて自社の理念に合う学生を選考。
・1次選考―グループごとに
 スワニーの魅力をプレゼン
 (次の選考に進む学生を
  学生自身が選考)
・2次選考―1泊2日の合宿形
 式で、グループごとに将来
 のスワニーのビジョンを
 演劇形式で全社員の前で
 発表(次の選考に進む学生
 を学生自身が選考)
・3次選考―若手社員をメン
 ターにつけて、同社の幹部
 に商品をセールスプレゼン
・4次選考―幹部と30分間の
 個別面談
・5次選考―最後のシークレッ
 トミッションにより合格通知
・求める人物像を明確化(チャレンジ、求心力、適応力、自己表現力、思いやり)。
育成
・入社後、5月から4ヶ月間中国の工場で研修、その後、ものづくり研修など入社後1年までは研修が続く。
・外国人の教師が常駐し英語研修(7時半~、18時~)。
・2ヶ月に1回のセールスマン研修(会社、職業、商品、自分に対する自信を植え付ける)。
・全社員が話し方研修を受講。
・幹部に対する自己啓発研修(読書をし、感想文を提出)。
・年間数人がビジネススクール「グロービス」を受講。
・社員のキャリアプランを策定。
定着
・社員が主体となって8つのクレド(信条)を設定(笑顔で挨拶、感謝、初心、チャレンジ、チームワーク、自由闊達、モノづくり、グローバル)。
・全社員参加で高度な5S活動を浸透させるために12のプロジェクトチームが活動。
・お客様からの感謝の言葉が記載された「アンケートハガキ」(年間6,000通)を部門で共有。
・年に1回、社員全員が社長と面談。
・新卒採用計画を記載したスワニー手帳を全社員が保有し、個人の目標を書き込む。
・人事と給与情報以外を公開するオープン経営。
・社員持株制度(購入の際、5%の補助)。
成果
チームワークが良くなり問題解決能力が向上!第2回四国でいちばん大切にしたい会社大賞
企業ストーリー

人材は二の次、新卒入社後の長い海外勤務もあり離職率は高止まりしていた。

 手袋の生産地として知られる香川県東かがわ市を代表するメーカーである株式会社スワニー。時代を見据え、いち早くグローバル化の波に乗り、1980年にアメリカで販売会社を設立、1984年には中国で工場を構えた。現在、「SWANY」ブランドはアメリカにおいてトップブランドの地位を確立。手袋製造のノウハウをもとに現会長の三好氏が10年の歳月をかけて完成させた「Walkin’Bag」は杖のようにもたれて歩くことができ、お年寄りや障害者の方から絶大な支持を得ている。
 こうした積極的な事業展開の一方で人材面は二の次に置かれていた。例えば、同社ではグローバルで活躍できる人材を育成しようと、新卒で入社すると、すぐに海外に配置され、平均3~4年勤務していた。「しかし、これが離職率の高さにつながっていました。職場に同世代の社員が少ない環境のためか協調性も今いち。個人プレーが目立っていました」と当時を振り返る板野社長。2009年に社長に就任。同時に掲げたのが「社員本位」の経営だ。

社員本位の経営で、関係性の質の向上を目指す

 同社の社是である「自分のために 会社のために 社員のために」。まず板野社長は、この「自分のために」に「社員とその家族の利益と幸福を追求します」という解釈をつけ、社員満足を求める姿勢を全社に示した。
さらに、社員のあるべき姿としてクレド(信条)の設定を進めた。プロジェクトチームを結成し、パートを含めた全社員から「入社して一番成功したこと」「感謝したこと」などのテーマで1,600文字の作文を募集し、大切と思われるキーワードを抽出し、「笑顔で挨拶」「感謝」「初心」など8つのクレドを約半年かけて完成させた
 クレド以外にも、5S活動をテーマに12の全社チームを運営するなど、板野社長はチーム活動を重視する。「ダニエル・キム氏の成功循環という理論に学びました。結果を出すためには組織の関係性の質を高めること。当社では釣りや音楽など11の同好会がありますが、これも関係性の質の向上を後押ししています」とその狙いを語る。

グループワークを中心とした採用活動で徳と才を兼ね備えた学生を採用

 長年、数人ずつ新卒採用を続けてきた同社であるが、「現場で本当に必要とする人材が採用できていない」と感じていた板野社長は、採用活動にもメスを入れた。まずは人材要件を明確化。「チャレンジ、求心力、適応力、自己表現力、思いやり」というキーワードを抽出し、個人としての能力(才)だけでなく、協調性に富みチームをどう動かせるかという視点(徳)も大切にした。「当社のものづくりはチームプレー。中国やカンボジアなどの工場においても現地の従業員に溶け込み、牽引するリーダーシップが大切になります」と板野社長。 
 その狙いは採用フローにも現れ、1次選考ではグループごとにスワニーの魅力をプレゼン、2次選考においても1泊2日の合宿形式でグループごとに将来のスワニーのビジョンを演劇形式で全社員の前で発表。1次・2次とも学生自身が次の選考に進む学生を選ぶ。選考は、若手社員をメンターにつけた個人プレゼンなど、その後も5次選考まで続き、ミスマッチの解消につなげている。
 入社後は、定番だった長期の海外勤務は廃止。最初の1ヶ月の社内研修の後、中国において5ヶ月の研修、その後のものづくり研修など新人研修は1年間に及ぶ。さらに外国人教師による英語研修や、全社員を対象とした話し方研修、2ヶ月に1回実施するセールスマン研修、ビジネススクール「グロービス」の受講など、同社では社員教育に多くの時間とコストをかける。

チームワークと社員のモチベーションが向上。情報共有と問題解決のスピードが速まる

 社内改革に取り組み始めて約4年。離職率の改善など結果に現れるのは、まだまだこれからという板野社長だが、社員間の関係性の質は向上。社内の情報共有もスムーズとなり、問題解決のスピードは速くなったという。「昔から当社は人事と給与以外の情報は全てオープン。さらに近年、チームワークが向上し、社内の風通しと情報の流れが速くなりました。当社のような企画開発型のクリエイティブな仕事では、これは最も大切な要素ですね」。 
同社の目標は2018年にグローバルブランドメーカーとして業界No.1になること。高い頂の礎となるのが「社員本位」の経営。その目標に向かって“社員長”板野氏と社員たちの歩みは続く。

熟練の技術は、創業以来脈々と受け継がれている

お客様アンケートには、担当者が必ず目を通し、使う人の声に耳を傾ける商品づくりを行っている。

「社内の問題解決能力が早くなり、企画開発のスピードも上がった」と板野社長。

会社はこう変わった

好調な業績、高い顧客満足、人材育成を核とした経営にも高い評価社員を大切にする経営や、社員の自主性と考える力を育む様々な取り組みが評価されて、2013年3月に第二回「四国で一番大切にしたい会社 四国本部長賞」を受賞。業績も好調で増収が続いている。アメリカではSWANYブランドのスキー手袋がNo.1ブランドとして認知され、キャスター付きの「Walkin’Bag」には年間約6,000通もの感謝の気持ちが込められた「アンケートハガキ」が返信され、社員に共有されている。

今すぐできるはじめの一歩! 1.積極的に飲み会を開催するなど、社員の関係性の質を高めましょう。
2.「ありがとうカード」の共有など、全社員で仕事のやりがいや喜びを共有し、モチベーションを高める工夫をしましょう。
3.入社1年目の若手社員でも、「さん」づけで呼ぶなど、大切な存在であることを共有しましょう。

企業データ

企業名:株式会社スワニー
住 所:香川県東かがわ市松原981
創 業:1937年
設 立:1950年3月  資本金:9000万円
従業員数:105名(2013年11月)
http://www.swany.co.jp/
売上高:48億4000万円
【事業内容】
グローブ(ファッション、カジュアル、ドレス、スポーツ等)および、ラゲッジ(鞄類)の製造販売および輸出入事業
【グループ会社】
スワニーアメリカCorp. 、中国スワニー有限公司(江蘇省)、長城スワニー手套有限公司(浙江省)
、スワニー手套有限公司(江蘇省)、太倉スワニー手套有限公司(江蘇省)、スワニー カンボジア コーポレーション


※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年1月)の情報です。

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