株式会社さんびる

定着
地道な社員への人間教育が実を結び、企業の急成長に結びつく。

私は「形から入って心に至る」という考えを大切にしています。例えば当社が取り組んでいる活動の一つに「環境整備活動」があります。これはカリスマ経営者として有名な株式会社武蔵野の小山昇社長から学んだものですが、「整理・整頓・清潔・礼儀・規律・現場点検」をテーマに、朝礼後にトイレ掃除などの環境整備活動を実施しています。私も社員と一緒に取り組んでいます。この活動には社員同士が心を通わせ、仕事のやり方や考え方に気づく習慣を身につけ、心を養うという狙いがあります。

企業ストーリー

きっかけ

ショックな事件で浮き彫りになった、社名を隠して働く大勢の社員たち。

「ショックなことがあってねえ」といつもは笑顔を絶やさない田中社長が沈んだ声で当時を振り返る。田中氏が社長に就任した2001年、ある社員の子供が急病にかかった。しかし、その社員は学校に提出している子供の緊急連絡先に「さんびる」の電話番号ではなく、清掃員として従事している「病院」の電話番号を記載。当然のように病院の従業員でないその社員に電話はつながらない。たまたま病院の電話交換も「さんびる」の社員が担当していたので社員と連絡が取れ、事なきを得た。その社員に理由を聞くと「清掃の仕事をしていることや、会社名を子どもの学校に知られたくなかったから」。さらに社内の調査を進めると、ネームプレートの社名を消して働いている従業員が大勢いるなど、いくつもの事実が判明してきた。「当時は社会においても清掃という仕事に偏見がありました。多くの社員も、仕事を、会社を愛していなかったんですね」と当時を反省する。
衝撃を受けた田中社長はヒアリングを繰り返し、「いい会社とはどんな会社だろう」と社員全員で考えた。そこでたどり着いた結論が<b>「社員一人ひとりが幸せになれ、子どもを働かせたい会社」。</b>この10年は、その理想の会社を目指して社員とともに走り続けた。

改善策1

ファーストネームで呼び合う、理念と計画を共有した明るい職場へ。

まずは明るい職場づくりのために「ファーストネーム」で呼び合うように。社員の誕生日には自宅にバースデイプレゼントを送付、社員がそのお礼を書けるように返信レターを添え、社長と社員とのコミュニケーションを深めた。年に1回はESアンケートを実施し、改善点を経営に反映。<b>クライアントから褒められた社員には社長賞を提供、毎年300名前後の社員が受賞する。</b>
さらには理念と価値観を共有するために全社員を対象とした職種別の研修を実施。マネジメント層とは1泊2日の合宿を年2回実施し、前期の見直しや理念・計画の共有を図り、大いに語り合う。営業エリアごとに実施する経営方針発表会には社員とともにクライアントにも同席していただき、経営の透明化を図った。一連の流れを同社ではアセスメント循環と呼び、毎年実施することで社員参加型の経営を目指している。

改善策2

毎日続ける社長メッセージは、10年余りで3,000通に。

 田中社長が最も力を入れたのが社員の人間形成だ。同社では組織として、人間として大切にしなければならない考え方や価値観を「マグマ」と呼ぶ。例えばマグマにはこんな一文がある。「“ないもの”を求める心から“あるもの”へ感謝する、生かされている“命”に感謝する」。
組織の志ともいえるマグマを浸透させ、社員の人間力を育むために2001年から田中社長は毎日、メッセージをメールで社員に送り続け、既に3,000号を超える。「小さなことでも良いから、コツコツと毎日続けることが大切だと社員に伝えています。私のメッセージもその一つ。靴を揃える、家族に挨拶をする、毎朝ラジオ体操をする、個々の社員がそれぞれのテーマを決めて実践しています。<b>小さなことの積み重ねが達成感と成功体験を生み、次のステップへの原動力となります。</b>それは組織も同じことです」と継続の大切さを語る。 
 こうしたコミュニケーションは社長からの一方通行ではない。同社には「社員から社長へのラブレター制度」があり、毎年約300通を超える社員からの手紙が届けられ、田中社長は1枚、1枚返答を書く。

成 果

第3回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査員特別賞受賞。

こうした一連の取り組みは、社員の帰属意識を高め、同社の企業イメージUPにも貢献。離職率は低下し、新卒採用における応募者も従来の数倍に拡大した。社員の幸せを追求する姿勢は様々なメディアにも取り上げられ、2013年には第3回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査員特別賞を受賞した。
その効果は人材面にとどまらず、企業業績にも大きな後押しとなり、この10年余りで急成長を遂げた。「総合ビルメンテナンスを事業の主軸とする当社は、何か商品を製造しているわけではありません。端的に言えば人材が商品。<b>社員の心の成長がサービスの質の向上につながっています」。</b>田中社長が常々口にしている「日々、コツコツと小さなことの積み重ねが大切」というポリシーも、実は清掃の仕事をはじめとした自社の業務内容と直結している。「日々の繰り返しかもしれない清掃活動を自分のために、お客様のために少しでも綺麗に行う」そんな想いが込められている。
「仕事への誇り」を高めようと始まった「心の改革」は同社の礎となり、急成長の原動力となっている。

1. 社員の心づかいから生まれた感動の話が詰まった「感動ストーリー」
2. 経営者と社員の距離が近く、日常会話からも風通しの良さを感じる
3. 掲示物ひとつにも、お客様への気持ちが込められている

株式会社さんびる

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