【第56回】~「肩書き」で自己PR~

厳しい残暑を終え、すっかり秋らしくなってきました。秋といえば、「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」…様々なことに打ち込みやすい季節のようですね。これから就職活動を本格化させる学生にとっては、「自己分析の秋」ともいえるでしょうか。
この時期に増えてくる相談内容の一つに「自己分析のやり方がわからない」「自分の長所がわからない」といったものが挙げられます。就職活動では必須の自己分析ですが、さて就職後、日常を送る中で“喉元過ぎれば熱さを忘れる”。わたしたち大人は自分のことを明確に人に伝えられるでしょうか?

『何によって人に憶えられたいか?』
マネジメントの父と称されるピーター・ドラッカーの名言の一つです。ご存知の方も多いと思います。先日、ドラッカー学会の理事を務める佐藤等氏による解説に触れ、この言葉の意味を改めて理解する機会を得ました。常に仕事において自己刷新を図る意味を問うているそうです。私は30代半ばでこの言葉に出会い、非常に大きな衝撃を受けました。その後、折に触れ思い出しますが、自己刷新というよりは省察として受け止めていたように思います。
“これまで自分は何をどう取り組んできたのか、そしてこれからどう在りたいのか。”
というように。周囲の人にも問いかけてみたいものの、ドラッカーの言葉をそのまま使うには、年齢的にも経験的にもまだまだ足りていないと感じてきました。そんな中、もっと軽やかに、他者との関わりの中で自分の在り方を探る方法に出会い、自己理解・他者理解にもなって面白いので紹介いたします。

それは、「be(ビー)の肩書きワークショップ」というものです。
フリーランスの「勉強家」を名乗る兼松佳宏さん。兼松さんによると、通常の肩書き(役職名)は「do(ドゥ)の肩書き」。これに対して、beの肩書きとは「自分はこんな人です」を表すものであり、自分で自由に決められます。つまり「勉強家」というのが兼松さんのbeの肩書きというわけです。
兼松さんの現在の専門分野はソーシャルデザインで大学特任教授や著述家として活動されていますが、これまで様々な肩書きの名刺を持ってこられたそうです。WEBデザイナー、アートディレクター、デザインジャーナリスト…。しかし、肩書きと自分のズレに悶々とする20代だったといいます。その後、30歳で「勉強家」を自分の真ん中に置いたことで気持ちが楽になったことから、知人と何度も試行錯誤し、「beの肩書きワークショップ」を形にされ、提供されています。
そして、このワークショップはいかようにもアレンジし、自由に開催してOK!!ということで、先日、私的なコミュニティのレクリエーションで実施してみました。ワークの大まかな流れは、次の通りです。

各自人生を書き出す→グループ内で語り合う→他者へbeの肩書きを贈る→自分のbeの肩書きを決める

人生を振り返る機会はあまりないため、初めは多くの方が考え込み、筆が動きません。しかし、人生を語り出すと止まらない(笑)。さらにbeの肩書きを贈り合う場面では、
「これ、嬉しいなぁ」
「自分の名札に追加してもいいね!」
なんて声も。また、普段の関わりだけでは知り得ない一面を知る機会にもなり、「他の方たちともやってみたい」など、とても盛り上がりました。

通常、退職すると名刺も肩書きも無くなりますが、自分自身を表すbeの肩書きは組織から離れても、どんな仕事をしていても意味を持ち、ブラッシュアップさせることもできます。単に自分をPRするためだけではなく、常に自分の根幹である「在り方」を認識することもできます。自分の在り方を認識することは、自分らしい人生をデザインする上でとても大切だと思います。
もし今、仕事で困難に直面していても自分の在り方に気付くことで仕事への取り組み方が変わるかもしれません。その変化が次の仕事につながることもあるでしょう。何かにつまずいたとき、迷ったときに自分の在り方に戻ることで前を向けることもあるでしょう。自分の在り方なんてわからないが、こう在りたいと思うbeの肩書きを心に持つことで目標を持って歩み出せるかもしれません。また、定年退職後の人生の道標になるかもしれません。

就職活動の自己分析は、社会に出る前に自分を知る大切な機会です。また、愛ワークで実施している「ライフキャリアチェック(LCC)」も今の自分を見つめ、自分の在り方に目を向けるきっかけとなります。様々な方法で、あらゆるタイミングで今の自分を見つめ、未来を想像しながら、これからの在り方を探ることは人生において大きな価値があるのではないでしょうか。在り方が行動に表れます。仕事のパフォーマンスにも影響します。そう考えると、若者より少し前を歩いている大人こそ、自分を客観的に見つめて、在り方を認識する必要がありそうです。

『何によって人に憶えられたいか?』
ドラッカーは13歳で宗教の先生からこの問いを投げかけられました。そして60年振りの同窓会では、同窓生全員この問いを憶えていました。そしてみな、40代になるまでは意味がわからなかったが、その後この質問のおかげで人生が変わったと話したそうです。さらにドラッカーは、「成長の偉大な能力を持つ者はすべて、自分自身に焦点を合わせている」とも述べています。
就職活動において、また人生の途中で、自分自身を見つめることによって自分らしく豊かな人生が歩めますよう、キャリアコンサルタントして皆様のお役に立てれば幸いです。

~「人生を豊かにできる」人と組織を増やします~
ジョブカフェ愛work(愛媛県若年者就職支援センター)
相談グループ・キャリアコンサルタント 中田 めぐむ

 

 

2019年11月28日更新 | カテゴリー:お知らせ, 企業の方, 愛媛の経済サイト E4, 教育機関・保護者の方