【第52回】採用くださった企業に会ってきました~社員が続けたいと思う会社&行動を生み出す「自己効力感」を高める仕組み~

今年は遅い梅雨入りでしたね。売り手市場が続くなか、採用活動に危機感をもって取り組まれている企業は多く、この1,2年でジョブカフェ愛workに採用・育成の相談希望で来所される企業が増えています。大手企業に比べてネームバリューがなく採用活動に困っていると、マッチングイベントの応募社数は例年の倍近くになることもあります。また、必死で活動し採用に繋がっても辞めてしまう、定着するために何ができるかと真剣に悩まれ、愛workの出前講座や企業向けセミナーの参加を希望される企業も増えてきています。

企業への採用活動支援と同じように職場定着フォローの大切さも感じており、先月、ジョブカフェ愛workを通じて若者を採用された企業に数社訪問させていただきました。今回は、「社員が続けたい会社」をテーマに、企業訪問をして感じたことや在職者・転職希望者の相談を通して見えたポイントとあわせて書きたいと思います。

 

1、企業訪問をしてみえたこと
私が訪問したのは、採用された10名の若者が入社後半年、1年、3年経過している数社です。採用時の企業の期待と採用後の仕事の取り組みや、企業側から見て入社前とのギャップがないか、育成のためにどのように関われているかなどをお伺いさせていただきました。
そして、若者10名全員が、変わらずその企業に勤めていました。定着していることを伺えたのはもちろん嬉しいですが、それ以上に、各人事担当者が10名其々の状況について、詳しく把握されていることはとても感激しました。
「初めの数カ月は:覚えるまでに時間がかかっていた、コミュニケーションに戸惑っていた、仕事の流れを理解することが難しいようだった、困っていること・望んでいることは何か聞いて別の仕事や方法を提案した」、「慣れてくると:職場の人とも馴染めるようになった、ミスも減った、新しい仕事も自分で手を挙げて引き受けてくれた、能力を評価されて社内の他部署で引き抜かれた、とにかく前向きに頑張ってくれている」と一人ひとりの状況を教えてくれました。
なかには、若者と直接話す機会をつくってくださった企業もありました。若者は「仕事はきついこともあります。でも一緒に入社した同期もいるので頑張ります」と入社前よりもいきいきとした表情で話され、直属の上司や人事担当者とざっくばらんにコミュニケーションをとり満足感と充実感をもって取り組まれている様子を見ることもできました。

昨今、早期離職が多いなか、なぜこの10名は全員定着しているのか、企業の取り組みをお伺いするなかで感じたことがあります。
「仕事を辞めない」のは、他に探すのは面倒、また就活するのは大変、今の時代なかなか仕事は見つからない、などネガティブな理由もあるとは思います。実際そう考える人は多いかもしれません。
しかし、企業の多くは、仕事をただ続けるのではなく「この会社・この仕事がいい、辞めたくない」と前向きな意志として、社員が自社のファンになり、定着できることを目指していると思います。企業のお話を伺う度に、従業員がこのようになるために何ができるのか、企業は真剣に考えられていることを感じます。

 

2、在職者や転職希望者の相談を通して見えてきたポイント
ジョブカフェ愛workの利用者は求職者の方だけでなく、在職中の方も多くいます。そのため、私たちキャリアコンサルタントは求職者の方の状況だけでなく、在職者の方から、何年も継続できたこと、離職に悩んだけれども留まった経緯、やむを得ず転職せざるを得なくなった場合に長年勤めた会社の環境の振り返りを聞かせていただくことがあります。
すると、共通してみえることがあります。
長く勤めたい、辞めたくない前向きな意志が芽生えている背景についてです。
それは、社員自身が「会社に対して安心感や信頼感を得られていること」、そして、「仕事に成長意欲をもって充実感ややりがいを感じられている」ということです。そのための仕組みがあることや、取り組む姿勢が社員に伝わっていることはとても重要なのだと感じています。
たとえば、以下のようなことです。

 

・自分の適性や希望に応じた配置がある

・成長できるための小さな挑戦の機会をくれる、任せてくれるが放置はしない

・自分の仕事や成長について振り返りとフィードバックを受けられる

・周りに会社に対して不平不満を言っている人は少ない

・理念が浸透し、目標や目的をもって取り組むポジティブな社風がある、なあなあな雰囲気がない

・自分の意見やアイデアを否定しないで聴いてくれる、取り入れてくれる

・困ったことがあれば相談できる人がいる・相談できる雰囲気がある

・どうやればできるか一緒に考えてくれる(一人では限界がある)

・作業工程や仕組みがしっかりありステップアップが実感できる・イメージしやすい、どんな力や知識が不足しているのか理解できる、丁寧な教育がある

・人間関係が良好、職場に馴染めていると感じられる

・勉強会があり知識を深めることができる

・心身ともに健康的に働けるルールがある

・働きやすい環境づくり、安心と安全な制度がある(あるだけではなく実績があり当たり前に使える社風、新しい制度を創る風土がある)

 

このように、会社に「安心感や信頼感」、仕事に「成長意欲や充実感」を感じられるということは前向きな意志の芽生えに大切なことのようです。

最後に挙げている「働きやすい環境づくり」では、上記の訪問企業は今年度から年間休日数を90日台から100日を超える日数への増加を実現され、社員にとって少しでも働きやすい環境を整える意志や姿勢を示されていました。
ただもちろん、定着している10名は会社側の整備だけでなく、彼らが必死な思いで就職活動をしたことや前職の経験を経たからこそ気づいた価値観を大切に職業・企業選択をしたこと、何より、就職に対する強い意志をもち固く決意した上でスタートラインに立った経緯があるのは忘れてはならないことです。

 

3、行動を生み出す「自己効力感」
就職を目指す人、現在在職中の社員も、自分自身の向上意欲をもち、行動を生み出す「自分にもできそうな気がする!」という「自己効力感(※提唱者:心理学者アルバート・バンデューラ)」を高めることはとても大切なことです。
「自己効力感」が高まると「自分にもやれそう!」の気持ちが芽生え、成長のチャンス(経験)を得る行動を生み、その行動の積み重ねが「仕事がおもしろくなってきた、もっとこんなことがしてみたい」という成長や向上意欲に繋がります。
その「自己効力感」を高めるには、小さなステップ(経験)の機会があること、そして、適切なフィードバックと承認されることが肝要です。「認めてもらえた、見てくれている、期待してくれている、必要とされている」と実感できることが、自分自身を信じられることや、他者・組織への信頼が高まることにもなるのだと思います。

私たちキャリアコンサルタントは、この「行動を自分自身で起こしたくなる根っこ」が太く育つように、
知る・やってみるの体験、体験や経験の丁寧な振り返り、承認やありのままの自分を受け入れることを自身で味わうことの過程を大切にしています。自分自身を受け入れ自分を信じた後、行動・振り返り・自己成長欲の向上に変化していく姿を幾度となく見てきているからです。

制度などの労働条件を整えることは、安全で安心した就労に重要な要素だと思います。しかし、それと同じくらい、仕事に充実感や成長意欲をもち、自分自身で可能性を信じて取り組める仕組みや環境を整えることは意義深いことだと改めて感じています。

 

~「人生を豊かにできる」人と組織を増やします~
ジョブカフェ愛work(愛媛県若年者就職支援センター)
若者グループ・キャリアコンサルタント 辻本絵美

2019年07月25日更新 | カテゴリー:お知らせ, 企業の方, 愛媛の経済サイト E4, 教育機関・保護者の方