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技術への自由な挑戦と遊び心で、年間1万人が視察にする職場に

株式会社浜野製作所

自由なものづくりの根源にある「報告・連絡・相談」 当社では、社員には自由にものづくりをさせています。しかし、権限移譲をしすぎて責任を押し付けてしまうと社員が委縮してしまい連絡が滞り、何が起こっても把握できません。また、規約やルールで縛ると仕事がやりにくく、自由な発想やチャレンジ精神の妨げになります。大切なのは情報の共有、基本は「報告・連絡・相談」です。それは、部下から上司に対してだけでなく上司から部下に対しても同様で「こんな風にしたい」といった意図を共有することが大切です。情報が共有されていれば、多少の軌道修正は可能ですし、失敗があっても会社が傾くような大きな問題にはなりません。

代表取締役
浜野慶一
 1962年東京都墨田区生まれ、大学卒業後、都内の精密板金加工メーカーに就職。1993年創業者である父・浜野嘉彦氏の死去に伴い、株式会社浜野製作所の代表取締役に就任。東京中小企業家同友会の代表理事や経済産業省・産学連携人材育成事業「大学・大学院企業家教育推進ネットワーク」の外部講師を務めるなど多方面で活躍中。
課題
大量生産から少量多品種へビジネスモデルを転換し、事業が拡大
改善策
採用
●インターンシップを積極活用(ミッション達成型ワークショップ)
●新卒採用を重視、未経験者を積極的に採用
育成
●ジョブローテーションを全社的に推進し、幅広い技術の習得を促進する
●産学官連携プロジェクトには若手社員を積極的にリーダーに登用(電気自動車HOKUSAI・深海探査機「江戸っ子1号」プロジェクトなど)
●一人ひとりの力量マップを作製
●ITを活用した受発注、業務改革を推進
定着
●休日工場開放日を設け、社員が自由に機械を使用しプライベートなものを含め好きなものを製作、終了後は飲み会やバーベキューなどで親睦を深める
●月次決算を全社員(パート含む)に公開
●「アウト・オブ・キッザニア」に参画し、小学生の社会科見学や中学生の体験授業を受け入れ
●3Dプリンタ等を導入した実験施設「Garage Sumida(ガレージスミダ)」を運営
●全国のものづくり企業に声をかけて新たなビジネスの創出を目的とした「スモールメイカーズショー」を開催
成果
社長就任時に5社だった取引先は1,000社を超えるまでに事業拡大
企業ストーリー

苦境のなか試作・少量多品種生産に活路を見出だす

 1968年、先代が東京都墨田区に立ち上げた町工場からスタートした浜野製作所。金型製作や金属部品の大量生産を主に営んでいたが1993年に先代が急逝。浜野社長が引き継いだ。
 だが、時代はバブル崩壊直後。コスト削減のため大量生産品は地方や海外など人件費が安い工場へ流れていく。受注が減っていくなか、浜野社長は試作品・少量多品種生産品の精密板金加工へのシフトを決意。不幸なことに2000年に近隣出火のもらい火で工場が全焼し、建て替えの必要もあり、業務内容を大きく転換させた。
 当時は、社長と社員一人の2名体制、取引先も5社程度。それも4次請け、5次請けだったと言う。「必死で新たに試作加工をさせていただく顧客を開拓し、なんとか発注をいただければ納期の半分で仕上げて信頼を得ました」と当時を振り返る。こうした努力もあり発注量が増えていくなかで、技術者不足は深刻であった。機械について教えている時間はないと中途採用で熟練者を雇うが、「前の会社は」「これは昔から」と過去の話が思わず口から出る。「私たちは未来に向かって生きているのだから、経験も大事だが新しいことにチャレンジしていかなければ」と感じた浜野社長は採用方針を変更し、自分たちのやりたいことを理解し、一生懸命仕事に取り組むことができる未経験者、特に新卒採用に力を入れることにした。

産学官連携プロジェクトを通じて若手社員の育成につなげる

 最盛期には約1万軒あった墨田区の町工場は今や4分の1ほどに減少している。そこで2003年、墨田区は早稲田大学と包括提携し、町工場を元気にするために「すみだ産学官連携クラブ」を設立。様々なプロジェクトが立ち上がるなか、同社は2008年から2012年にかけて電気自動車「HOKUSAI」の開発に携わった。これは環境に配慮した小型電気自動車を開発する事業で、同社は曲げ・溶接技術を活かしアルミボディの形成を担当、美しい外観を演出した。HOKUSAIは3号まで製作され、充電8時間で連続航続距離35km、最高時速50km/hを達成し、その取り組みはメディアにも取り上げられた。そのほかにも水深7,800mの海底に生息する生物の3Dフルハイビジョン撮影に成功した深海探査機「江戸っ子1号」の開発など幾つもの産学官連携事業を手掛ける。
 こうしたプロジェクトには若手社員をリーダーに置くことで、人材育成に役立てているという。「利益に直結するとは考えていません。ただ、セミナーなどの座学に参加するよりも、額に汗しながら業種の異なる人たちと達成感を分かち合うことで、一生忘れられないような体験ができると考えています」と浜野社長は語る。
 また、同社は休日工場開放日を設けている。自分が触ってみたい機械を使用し、プライベートな製品も製作可能で、社員同士がお互いの技術を教え合う場になっている。「専門性の高い技術者を育てる一方で、幅広い技術を理解できる人材も組織には必要。そのためにジョブローテーションを積極的に行うととともに、休日工場開放日のような取り組みで情報の共有につなげています」。開放日の後は社員同士で飲み会やバーベキューを実施し親睦を深めているという。

地域にひらかれた、新たな町工場のモデルを提示

 同社の経営理念は「『おもてなしの心』を常に持ってお客様・スタッフ・地域に感謝・還元し、夢(自己実現)と希望と誇りを持った活力ある企業を目指そう!」というもの。この背景には、地域への想いが込められている。もらい火災の際に快く工場を貸してくれた地域の不動産屋さんや大家さん、心配して駆けつけてくれた取引先の担当者や地域の皆さん、経営が苦しい時に何も言わず付いてきてくれたスタッフなど、助けてくれた人々に恩返しをしたいという強い気持ちのあらわれだ。
 同社ではそうした地域への想いを具現化した様々な取り組みも行う。たとえば、「アウト・オブ・キッザニア」に参画し、夏休みの小学生を対象にした就業体験ではものづくりの面白さを伝えている。また、自社工場の横に3Dプリンタ等の最新設備を導入した「Garage Sumida(ガレージスミダ)」を開設。
個人からものづくりベンチャー企業まで、都内で本格的なものづくりを考えている多くの方のお困りごとを解決し、試作から量産までを支援している。地域への恩返しと始めたプロジェクトは、一貫して「ものづくり」の軸から外れることはない。それが創業から48年町工場として培ってきた同社の誇りであろう。

社長就任時1名だった社員も今は40名(パート従業員含む)に。取引先も1,000を超える

 新卒採用にシフトし社員は順調に増え、現在は34名に(パート従業員含む)。この新卒採用において大きな力を発揮したのがインターンシップだ。今では当たり前になったインターンシップであるが、同社では2003年から取り組んだ。長年、墨田区の産業振興に携わってきた関満博一橋大学教授(当時)が、商業科3、4回生の研究テーマのモデルケースとして同社を取り上げたことがその始まり。現在、年2回行われるインターンシップには全国からエントリーがあり、今年度は有名国立大・私立大を含む16の大学・高専から21名が参加。「夢を持って新たなステップを踏む社員以外、最近では離職がない」と浜野社長。これもインターンシップで会社と学生がお互いを十分に理解したうえで採用しているからであろう。
 2000年当時、5社程度だった取引先も現在は1,000社を超えるほどに。数年前には全国のものづくり企業に声をかけ、新たなビジネスの創出を目的とした「スモールメイカーズショー」も開催した。今や浜野製作所は全国の町工場の希望の星となっている。

斬新な工場外観。このカラーリングが同社のシンボル的存在になっている

電気自動車「HOKUSAI」とともに記念撮影

Garage Sumidaの内部。試作品や最新の機械・設備が並ぶ

会社はこう変わった

おもちゃ箱のような工場の中で日夜新しいものが生まれる 「経営者が肌で感じる楽しいことワクワクしたことを思い切ってやってみることです。私は電気自動車もアウト・オブ・キッザニアも人材教育だと思って始めました。売上に直結するとは思わなかった。しかし、人材が育てば長期的には成長の大きな源泉になるのです」と言う浜野社長のもと、社員たちは柔軟な発想で様々なプロジェクトに取り組んでいる。こうした取り組みを一目見ようと、企業や自治体、商工会議所など、全国、海外から約1万人の視察者が、毎年同社を訪れる。また、2005年には「すみだが元気になるものづくり企業大賞」受賞、2007年には東京商工会議所主催の第5回「勇気ある経営大賞」優秀賞受賞、経済産業省主催「平成25年おもてなし経営企業選」選出など、華々しい受賞歴を誇る。

今すぐできるはじめの一歩! 1.休日に工場を開放し、社員のものづくりへの動機付けを高めましょう。
2.工場の外観や塗装を工夫してみましょう。
3.地域や教育機関とのつながりを大切にし、積極的に交流しましょう。

企業データ

企業名:株式会社浜野製作所
住 所:東京都墨田区八広4-39-7
創 業:1968年
従業員数:40名(2017年2月現在)
http://hamano-products.co.jp/
【事業内容】
板金・架台・筐体設計、各種アッセンブリ加工、精密板金加工・レーザー加工、金属プレス金型製作、金属プレス加工、切削加工・機械加工、複合加工、開発・設計、試作制作。設計力と加工技術を活かし、構想段階(企画、設計・開発)から、その後の試作・製作、量産支援まで一貫体制を実現。

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2017年2月)の情報です。

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