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地道な社員への人間教育が実を結び、企業の急成長に結びつく。

株式会社さんびる

形から入って、心に至る。私は「形から入って心に至る」という考えを大切にしています。例えば当社が取り組んでいる活動の一つに「環境整備活動」があります。これはカリスマ経営者として有名な株式会社武蔵野の小山昇社長から学んだものですが、「整理・整頓・清潔・礼儀・規律・現場点検」をテーマに、朝礼後にトイレ掃除などの環境整備活動を実施しています。私も社員と一緒に取り組んでいます。この活動には社員同士が心を通わせ、仕事のやり方や考え方に気づく習慣を身につけ、心を養うという狙いがあります。

代表取締役社長
田中正彦
1958年生まれの55歳。大手製鉄会社の電気設計職等を経て1979年に株式会社さんびる(当時:(株)山陰ビルサービス)に入社。主に営業畑を歩み、各地区の支店長等を経て2001年に代表取締役社長に就任。座右の銘は「敬天愛人(天を敬い人を愛す)」。
課題
仕事に、会社に、誇りを持てない社員たちが大勢いた。
改善策
採用
・毎年5~10名の新卒採用を継続的に実施。
・人材要件を明確化「素直であること」、「やさしいこと」。
・経営理念に共感する人物を採用。
育成
・社員一人ひとりの人間形成を重要視する育成方針。
・理念の浸透と社員の人間形成のために、社長が毎日、メールでメッセージを送付、10年間で3,000号に達する。
・「こつこつ毎日やることを」各社員が設定。(例:靴を揃える、日記を書く、ラジオ体操をするなど)
・全社横断的なチーム活動を実施。(ES・CS、教育、ISO、社内文集、感動DVD、販促)
・「整理・整頓・清潔・礼儀・規律・現場点検」などの環境整備活動に力を入れる。
・毎年、社員全員による職種別研修を実施。
・マネジメント層は年に2回、1泊2日で合宿を行い、理念や計画の共有、前期の振り返りを行う。
定着
・社員満足度の追及を目指し、年に1回、ESアンケートを実施。
・入社祝い、誕生祝いを必ず送付。
・役員、社員をファーストネームで呼び合う。
・女性の育児休暇とともに、男性の育児休暇も奨励。
・各営業エリアごとに社員の家族も含めた忘年会を実施し、必ず社長も参加。
・各営業エリアにおいて、社員およびクライアントが出席する経営方針発表会を毎年、実施。
・年間300人を超える社員に社長賞を提供。
成果
社員の帰属意識、会社のイメージが高まり、好調な業績が続く。
企業ストーリー

ショックな事件で浮き彫りになった、社名を隠して働く大勢の社員たち。

「ショックなことがあってねえ」といつもは笑顔を絶やさない田中社長が沈んだ声で当時を振り返る。田中氏が社長に就任した2001年、ある社員の子供が急病にかかった。しかし、その社員は学校に提出している子供の緊急連絡先に「さんびる」の電話番号ではなく、清掃員として従事している「病院」の電話番号を記載。当然のように病院の従業員でないその社員に電話はつながらない。たまたま病院の電話交換も「さんびる」の社員が担当していたので社員と連絡が取れ、事なきを得た。その社員に理由を聞くと「清掃の仕事をしていることや、会社名を子どもの学校に知られたくなかったから」。さらに社内の調査を進めると、ネームプレートの社名を消して働いている従業員が大勢いるなど、いくつもの事実が判明してきた。「当時は社会においても清掃という仕事に偏見がありました。多くの社員も、仕事を、会社を愛していなかったんですね」と当時を反省する。
衝撃を受けた田中社長はヒアリングを繰り返し、「いい会社とはどんな会社だろう」と社員全員で考えた。そこでたどり着いた結論が「社員一人ひとりが幸せになれ、子どもを働かせたい会社」。この10年は、その理想の会社を目指して社員とともに走り続けた。

ファーストネームで呼び合う、理念と計画を共有した明るい職場へ。

まずは明るい職場づくりのために「ファーストネーム」で呼び合うように。社員の誕生日には自宅にバースデイプレゼントを送付、社員がそのお礼を書けるように返信レターを添え、社長と社員とのコミュニケーションを深めた。年に1回はESアンケートを実施し、改善点を経営に反映。クライアントから褒められた社員には社長賞を提供、毎年300名前後の社員が受賞する。
さらには理念と価値観を共有するために全社員を対象とした職種別の研修を実施。マネジメント層とは1泊2日の合宿を年2回実施し、前期の見直しや理念・計画の共有を図り、大いに語り合う。営業エリアごとに実施する経営方針発表会には社員とともにクライアントにも同席していただき、経営の透明化を図った。一連の流れを同社ではアセスメント循環と呼び、毎年実施することで社員参加型の経営を目指している。

毎日続ける社長メッセージは、10年余りで3,000通に。

 田中社長が最も力を入れたのが社員の人間形成だ。同社では組織として、人間として大切にしなければならない考え方や価値観を「マグマ」と呼ぶ。例えばマグマにはこんな一文がある。「“ないもの”を求める心から“あるもの”へ感謝する、生かされている“命”に感謝する」。
組織の志ともいえるマグマを浸透させ、社員の人間力を育むために2001年から田中社長は毎日、メッセージをメールで社員に送り続け、既に3,000号を超える。「小さなことでも良いから、コツコツと毎日続けることが大切だと社員に伝えています。私のメッセージもその一つ。靴を揃える、家族に挨拶をする、毎朝ラジオ体操をする、個々の社員がそれぞれのテーマを決めて実践しています。小さなことの積み重ねが達成感と成功体験を生み、次のステップへの原動力となります。それは組織も同じことです」と継続の大切さを語る。 
 こうしたコミュニケーションは社長からの一方通行ではない。同社には「社員から社長へのラブレター制度」があり、毎年約300通を超える社員からの手紙が届けられ、田中社長は1枚、1枚返答を書く。

第3回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査員特別賞受賞。

こうした一連の取り組みは、社員の帰属意識を高め、同社の企業イメージUPにも貢献。離職率は低下し、新卒採用における応募者も従来の数倍に拡大した。社員の幸せを追求する姿勢は様々なメディアにも取り上げられ、2013年には第3回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査員特別賞を受賞した。
その効果は人材面にとどまらず、企業業績にも大きな後押しとなり、この10年余りで急成長を遂げた。「総合ビルメンテナンスを事業の主軸とする当社は、何か商品を製造しているわけではありません。端的に言えば人材が商品。社員の心の成長がサービスの質の向上につながっています」。田中社長が常々口にしている「日々、コツコツと小さなことの積み重ねが大切」というポリシーも、実は清掃の仕事をはじめとした自社の業務内容と直結している。「日々の繰り返しかもしれない清掃活動を自分のために、お客様のために少しでも綺麗に行う」そんな想いが込められている。
「仕事への誇り」を高めようと始まった「心の改革」は同社の礎となり、急成長の原動力となっている。

1. 社員の心づかいから生まれた感動の話が詰まった「感動ストーリー」

2. 経営者と社員の距離が近く、日常会話からも風通しの良さを感じる

3. 掲示物ひとつにも、お客様への気持ちが込められている

会社はこう変わった

10年余りで社員数が倍増、事業の多角化に成功する。組織改革に取り組みはじめた2001年当時の社員数が700名。現在は1,300名を超え、ここ1年で200名も増加。増収増益が続き事業の多角化も進めている。主軸事業である総合ビルメンテナンスを中心に、温浴施設やスポーツ施設など中国地方14施設の指定管理事業を手掛け、2009年には旧しまね社会保険センターの施設を活用し、健康運動施設「SKプラザ」をオープン、プール・アスレチックスなどの運動教室や囲碁・絵画などの文化教室も手掛ける。「様々なシーンで地域の人々と接することで、当社の社員の元気を地域にも還元したい」と田中社長は多角化の狙いを語る。

今すぐできるはじめの一歩! 1.社員みんなで、いい会社とはどんな会社か考えましょう。
2.朝礼や環境整備活動など組織として毎日できることを1つ決め、達成感と成功体験を共有しましょう。
3.手紙、メール、社内イベント等を活用し、積極的に理念の共有を図りましょう。

企業データ

企業名:株式会社さんびる
住 所:島根県松江市乃白町薬師前3-3
設 立:1977年4月 
従業員数:1,311名(2013年8月現在)
【事業内容】
総合ビルメンテナンス事業(清掃、環境衛生、設備管理、保安警備)、人材派遣、指定管理事業(体育館、温浴施設など中国地方14施設)、各種教室の開催(介護予防教室、健康教室)、自社健康運動施設SKプラザの運営、飲食事業

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年1月)の情報です。

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