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若年層の離職者ほぼゼロ。秘訣はネガティブ情報の共有にあり。

株式会社KEINS

実践を通じて新入社員の成長を促す。以前は新入社員のために研修を実施したり、ブラザー制度を導入したりしていましたが、実践を経験する方が成長は早いという結論に達し、プロジェクトのなかでスキルアップを促しています。今年の新入社員は、まずスマートフォンのアプリを開発。なかにはプログラミング言語をいちから勉強する社員もいましたが、先輩に聞きながら完遂しました。そのアプリは当社の名で一般にもリリースし、新入社員の達成感を高めています。

代表取締役
中野 仁栄
1964年生まれの49歳。愛媛県大洲市出身。専門学校を卒業後、1986年に新卒1期生として株式会社ケインズコンピュータシステム(現:株式会社 KEINS)に入社。エンジニアとして活躍した後、2003年に代表取締役に就任。人材の採用・育成に精力的に取り組み続ける。
課題
長期的なプランを立てず新卒採用、バブル崩壊とともに社員数は半減。
改善策
採用
・設立1年後の1986年から継続的に新卒採用を実施。
・2001年から就職ポータルサイトに出稿し、母集団を拡大。
・会社説明会でネガティブな情報も伝え、本音トークを展開する。
・採用は大卒者がメイン、コミュニケーション能力を重視し文系学生も採用。
・新卒採用を実施してきた30年間の知見をもとに、適性検査等の合格基準を明確化。
・採用理由を新入社員にしっかりと伝える。
育成
・新入社員には研修を兼ねて自分のアイディアでスマートフォンアプリを開発させ、実際にリリースする。
・社長自ら年に1回は1時間以上かけて社員全員と面談。
・クライアント元にいる社員ともSkype等を使用し、顔を見合わせながらミーティング。
・K-Visionとして、毎年社長手作りの経営計画書を全社員に配布。当期、中期、長期の目標とコミッション、前期の反省を記載し、方向性を統一。
定着
・エンジニアを卒業した後の受け皿として、農業事業とEV事業をスタート。
・農作業をしながら社員にヒアリング、ケアを行う。
・トマトやサツマイモの収穫に社員の家族を招待。
・サークル活動(スポーツ、自動車等)を推奨。社長自らも所属し活動。仕事だけでなくプライベートも共有することで社員ひとり一人をしっかりと把握するとともに、会社の風通しを良くしている。
成果
入社10年以内の離職者ほぼゼロ。高い顧客満足でリピート受注につなげる。
企業ストーリー

30年前から始めた新卒採用は、バブル崩壊とともに終焉。

「ITソリューションの必殺仕事人」を自負する株式会社KEINS。高いスキルはもちろんのこと、モラルやマナーなども身につけた人間力溢れるエンジニア集団は開発元である大手クライアントの心をしっかりと掴み、社内に営業スタッフがいなくても仕事が途切れることはない。
 そんな同社であるが、1985年の設立からこれまでに1度だけ大きな危機があった。それはバブル崩壊の直後。仕事は激減し、社員の心も離れ、社員数は半減した。「それまではイケイケの時代。人がいれば仕事がありました。長期的な経営計画や育成プランもなく、とりあえず採用をしていたため不況になった時、他社に負けないスキルや人間力が社員には身についていませんでした。愛社精神も十分でなく、会社を離れていく社員も少なくありませんでした」と中野社長は当時を振り返る。
 同社は新卒採用を3年間ストップ。採用方法と受け入れ体制を再検討した。

社長自ら全ての選考に参加。ネガティブ情報をしっかりと伝える。

 そうして再開した新卒採用では、採用人数を毎年1~2名に厳選。本当に必要な人材だけを採用した。2001年には地域の同業他社でもいち早く就職ポータルサイトに出稿。それまでは専門学校を通じて即戦力に近い人材を採用していたが、サイトを通じて大卒者のエントリーが急増した。技術の有無にこだわらず、将来性や人間的な魅力も踏まえたうえでの採用で、現在では新入社員の約8割が大卒生。そのうち3割が文系出身である。
 中野社長は、すべての採用プロセスに参加。「当社は人材が全て。選考に関わることで入社する社員に私自身が責任を持ちます」とその狙いを語る。採用活動において、中野社長が特に大切にしていることがミスマッチをなくすこと。「残業があり、お客様の都合によっては徹夜もあるよ」「クライアントの元での開発が中心だから、東京や名古屋への転勤もあるよ」「厳しい業界だけど頑張れば手に職がつくよ」とネガティブな情報も含め仕事の厳しさを学生に伝える。
 同社が新卒採用を始めて約30年。そのなかで培ってきた知見も今日の採用活動に役立っている。「以前は人柄だけで採用していた時期もありました。ただ、それだけでは長くは続かない。例えば適性検査一つをとっても、過去のデータを分析し最低限必要な点数を明確に設定しています」。こうしたプロセスのなかで採用した学生には「なぜ採用したのか」「どんな点に期待しているのか」をしっかりと伝え、仕事へのモチベーションを高める。

エンジニアの受け皿づくりのために、農業分野に進出。

同社には「K-VISION」という経営計画書がある。社員全員で会社の歩むべき方向性を共有するために、当期、中期、長期の目標を具体的に記載したものだ。その長期目標の欄には「エンジニアを卒業した後の職場づくり」という目標が記載されている。
 「エンジニアは50歳を過ぎると最新の技術に対応できなくなり、退社に追い込まれるケースが多い。これは地元のIT業界でも深刻な問題です。幸い当社は最も年齢の高いエンジニアが46歳で、まだその問題に直面していませんが、今から対策を考えておかなければなりません」。そんな想いから中野社長が注目したのが農業だ。2012年から120坪の農場を借りて、キュウリやナス、トマトの栽培を開始。2年目の今年は収穫した野菜をクライアントにも配った。「ときには社員を連れ出し農作業をしながら仕事やプライベートの相談に乗ることもあります。今年は社員の家族と一緒にトマトの収穫も行いました。福利厚生の面でも役立っていますね」。
中野社長が描くのは定年制のない職場づくり。農業事業以外にも愛媛県が進めるEV(電気自動車)事業でも卒業したエンジニアが活躍できないかと構想を練る。

業界でも驚異的な入社10年以内の離職者ほぼゼロ。

 ミスマッチを防ぐ採用活動、実践を通じた教育は社員の育成・定着につながり、入社10年以内の離職はほとんどいない。これは若年層の離職率が高いIT業界では驚異的なことだという。一方で「ここ数年、10年を超えた30代前半の脂がのりきったエンジニアが立て続けに辞めてしまい、大手に転職してしまいました」と悩みを語る中野社長。しかし裏を返せば、同社が市場価値の高いエンジニアを輩出しているとも言える。
「K-VISION」の「長期目標」にはもう一つ、「自社開発の割合を5割まで上げること」と記載されている。現在は8割がクライアント元での開発。これを実現するために2年前、初めて営業職を設けた。目標に向かって中野社長と社員たちの奮闘は続く。

KEINSの考え方の指針が詰まったK-Visionは、全社員分、社長の手作り。.

「若い人ならではの遊び心の詰まったアプリも多い」と中野社長

資格取得を奨励しており、一人で多くの資格を所有する社員も

会社はこう変わった

高い顧客満足、リピート受注につながっている。クライアント元での開発が主である同社にとって、社員の離職はそのまま売上の減少につながり死活問題。近年の離職率の低減は、安定した経営につながっている。また、各社員の長期的な育成も可能になり、顧客満足もUP。さらなるリピート受注につながっている。

今すぐできるはじめの一歩! 1.「なぜ採用したのか」「どのような点を期待しているのか」を新入社員に明確に伝え、仕事へのモチベーションを高めましょう。
2.経営者は社員と積極的に会話をしましょう。その際、プライベートな話題も共有しやすい機会を作り、自らの情報もオープンにしましょう。
3.財務など企業情報を社員と共有し、透明性の高い経営で帰属意識を高めましょう。

企業データ

企業名:株式会社KEINS
住 所:愛媛県松山市祝谷5丁目1番15号
創 業:1985年11月
設 立:1985年11月  資本金:6000万円
従業員数:46名(2013年11月現在)
http://www.keins-ltd.co.jp/
売上高:2億8,800万円(2011年10月期)
【事業内容】
情報システムの設計・開発・保守および運営管理、
情報処理システムおよび情報通信システムの構築のコンサルテーション、ソフトウェアの開発および販売、情報処理機器・情報通信機器および事務用機器の販売、一般企業の会計業務の代行

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年1月)の情報です。

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