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上下の壁をなくし、笑顔を大切にする職場で、高い定着率へ。

社会福祉法人松山紅梅会 高齢者総合福祉施設 梅本の里

笑顔溢れる職場のために、様々なアイディアを実施私たちが実践している職場づくりで大切にしているキーワードが「笑顔」です。これは利用者の方に満足して頂きたいという狙いもありますが、それよりも職員同士のコミュニケーションを豊かにする狙いがあります。職場の笑顔を増やすために、鏡の前に立って笑顔の練習をする、1時間に1回はありがとうを言う、朝礼の最後にくじ引きをして当った人が「笑える話」をするなど、様々なアイディアを実現し、笑顔溢れる職場づくりへつなげています。

グループホーム管理者
稲荷衆一
1980年生まれの33歳。進路に悩んでいたところ、中学の先生に「介護の仕事が向いているのでは」と勧められ、高校で介護を学ぶ。短大卒業後の2001年に高校時代の実習先であった梅本の里に入所。2011年にグループホームの管理者に就任。
課題
トップダウン式の指示や厳しい上下関係で、離職率が悪化。
改善策
採用
・毎年10~20名を新卒採用。
・必要に応じて中途採用を随時実施。公共の面接会などには積極的に参加しPR(担当者だけでなく、複数の職員が参加)。
育成
・施設長と職員の面談を定期的に実施(年2回程度)。
・愛媛県中小企業家同友会や他の勉強会等に、役員だけでなく職員も参加し、異業種での人脈や新たな気づきの発見につなげている。
・介護技術研修とともに人間学の研修も実施。
・管理職が研修を受け、その管理職が先生役となって職員にノウハウを伝える研修を実施することで、管理職同士、管理職と現場の職員のコミュニケーションを活性化。
定着
・顧客満足から従業員満足を追求する経営に変革。
・施設長自らが職員に声がけを積極的に行う。
・職員が企画した運動会やバーベキュー大会を実施。
・老人向けデイサービスと職員の子供向け託児所を一緒にした「小梅」を設立。
成果
職場に笑顔が増え、職員発信の提案も増加、離職率も改善へ。
企業ストーリー

職員の心の交流欠如から離職が増加。

 市民運動が発祥で誕生した高齢者総合福祉施設「梅本の里」。現在は特別養護老人ホームやデイサービス、グループホームなど多くの施設を運営し、地域の福祉を支えている。地域に開かれた介護施設を目指し、同施設が開催する夏祭りには地元の住民8,000人が参加するなど地域に愛されている同施設。しかし、かつては理事同士の確執や介護報酬の不正請求など次々と問題が発生。不安定な経営の結果、職場環境も悪化し、必然的に離職率も高まるという悪循環に陥っていた。稲荷氏は「当時は上下関係がすごく厳しかった。下の意見を聞き入れてもらえないことがほとんどだった」と振り返る。離職者は年10人前後と少なくなかった。
 介護バブルの真っただ中だった2006年、杉本太一氏が施設長に就任。愛媛県中小企業家同友会の研修会に参加し、異業種の会員と経営姿勢について討論するなかで、社員と真剣に向き合うことの大切さに気づいたという。それまでは、施設利用者の満足は追い求めても、職員との心の交流が重要視されていなかった。自身も同会の研修会に参加した経験のある稲荷氏は「注意を素直に聞かない部下の悩みを打ち明けたところ、ある方に“認めてもらいたいという部下の気持ちを理解している?”と言われてハッとしました。見えなかったものが見えてきた気がしました」という。
杉本施設長を中心に社内のコミュニケーションを活性化し、上司に意見を言える環境づくりへと改革が始まった。

施設長と職員全員の面談を実施。

 職員の本音を知るため、杉本施設長は全員と面談を実施。まずは意見をしっかりと聴くことに重点を置き「職場環境を良くすれば、職員は自然と利用者を大切にする」という結論に達した。稲荷氏は「施設長の姿勢が変わっていくのが分かった」という。顧客満足から職員満足へと方針転換。トップの「変身」で職員との関係性にも変化が生まれた。職員の発案で運動会やバーベキュー大会を開催。急成長のなかで施設が異なれば、「話したこともない」「名前も知らない」といった職員も存在しがちだった梅本の里で、横のつながりが生まれた。

技術・精神の両面で意識改革。

 また同友会の活動のなかで「学び」の大切さを知った杉本施設長は職員に対しても新たな研修を取り入れた。2ヶ月に1度、介護技術・人間学の両面で講師を招き研修を実施。介護技術に関しては全施設から選ばれた管理職10人がまず受講。次は自らが講師となり現場の職員に教えた。「人に教えることは難しい。管理職同士でもどう伝えようかと話し合いを重ねました。そのプロセスを通じて管理職の間で絆が生まれ、現場の職員の気持ちも理解できました。社内のコミュニケーションの活性化に大きくつながっています」と稲荷氏は語る。
 人間学の研修は全社員が参加。「自分が変わらなければ、周りも変わらない。過去のことばかり考えても、何も変わらない。未来を変えることを考えよう」。講師の言葉は心に伝わり、管理職と職員との接し方も変化。意見の伝え方を工夫したり、長所を褒めたりすることで、職員のモチベーションはアップ。お互いの距離もグッと縮まった。

笑顔が増えて、風通しのよい職場に。

社内改革の結果、上司と部下のカベはなくなり、風通しのいい職場に変わった。稲荷氏は「職場環境の改善で離職率は減った」と実感している。職員の笑顔は増え、利用者との心の交流も深まった。「ありがとうの言葉が飛び交う職場になってきた」と稲荷氏は実感。経営理念についても「施設長とみんなで、もっと分かりやすい言葉にしようと考えている」という。2011年には新しい試みとして、デイサービスと職員の子どもの託児所が一緒になった新たな施設「小梅」も開設した。職員と利用者がもっと笑顔になれる空間へと、梅本の里の挑戦は続く。

「施設長(左)とは何でも言い合える関係」/稲荷

施設内の掲示物は、スタッフが自主的に工夫し、利用者と一緒に作り上げる

利用者に楽しんでもらおうと設置した「だがしや」

会社はこう変わった

「笑える」職員を採用。新卒者の早期離職はほぼゼロが続く。 職場環境改善への取り組みは、採用面にもあらわれている。その一つが人材要件。稲荷氏は「合否のポイントは、いかに笑えるか。話している時のフィーリングや優しいオーラを感じる人を採用している」と話す。施設の増加とともに採用人員は増え、昨年から今年にかけて新卒・中途合わせて約25人を採用。新卒の3年以内離職者は「ほぼゼロ」が続く。

今すぐできるはじめの一歩! 1.経営陣や管理職は、鏡を見て笑う時間を設けるなど、スタッフに笑顔で接する努力をしましょう。
2.「ありがとう」を1時間に1回は言うルールを設けるなど、互いに尊重し合う風土を作りましょう。
3.経営陣や管理職は現場の職員と、プライベートの話題も含めオープンに話すなど、心の距離を近づけましょう

企業データ

企業名:社会福祉法人松山紅梅会 高齢者総合福祉施設 梅本の里
住 所:愛媛県松山市北梅本町1624-1
創 業:1993年9月
設 立:1993年9月 
従業員数:143名(正規職員58名、2013年11月)
http://www.umemoto.ecweb.jp/
【事業内容】
特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、通所介護事業、認知症対応型共同生活介護事業、居宅介護支援事業、訪問介護事業、事業所内託児所

※本記事内容、データにつきましては、取材時(2014年1月)の情報です。

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