【第19回】~辞めそうな若者が踏みとどまるとき~

「辞めました。」「辞めようと思う。」という方が相談に来所されるジョブカフェ愛workですが、先日、「やっぱり続けることにしました。」という報告を受けました。2週間前にお会いしたときには、「辞めると思います。」とお聞きしていただけに、何があったのかとびっくりしました。そのお気持ちが変わるきっかけになったのは、社長の若者に寄り添った対応でした。お二人に了承をいただきましたので、ご紹介します。

Aさん(29歳)は県外でシステムエンジニアをされ、Uターンで戻ってきました。残業の多い業界にあって、生活を大事にしたいという強い思いがあり、ほとんど残業無しで働きたいという強い希望を持っていました。職種を変えることも視野に入れて、就職活動をしていたのです。ただ、今すぐ経験者がほしいT社から「5時に帰ってもいいから、働いてほしい。」というお声を頂き、働いてみることになりました。

仕事との相性は良く、すぐになじめましたが、やはり5時に帰るということに、周囲が違和感を持っていると感じました。また、早く帰るのはいいが、もっと高いクオリティをという会社からの要望もあり、だんだんと居心地が悪くなっていきました。幹部と話しても「このままでは・・・。」ということだったため、辞めることを考え始めていました。しかし、普段会話をしない社長に話をしたとき、なぜ生活を大事にしたいのかということをじっくり聞いてくれたそうです。そして、「早く帰りたいのは、仕事にやりがいを感じていないことが原因ではないか?一つプロジェクトを任せてみるから、やってみろ。」と言ってくれました。

そう言ってもらって、Aさんはとても晴れ晴れとした顔をしていました。「前職では、やる気が持てないときに、プロジェクトリーダーを任され、責任の重さに耐えられず離職しました。それから、責任のある仕事を避けたい気持ちがありました。今回は、社長からプレッシャーのかかる期待ではなく、自分の仕事のやりがいを見つけてほしいというお気持ちから、仕事を任されたと感じて、うれしかったです。」「社長から『仕事にやりがいを感じたことがないとは、男としてかわいそうやわ。』といわれて、とても印象的でした。憐れんでいるのではなく、自分のことを本当に考えてくれている熱い気持ちが伝わりました。」とお話されていました。

社長からもお話をお聞きする機会があり、社長側のお気持ちはどうだったのかを聞いてみました。「5時に帰るというくらいだから、自信があるのだろうと期待していました。ただ、期待に沿わないところもあり、正直、とまどいました。今いる社員は、仕事がしたくて、好きで残業するメンバーたち。時間で区切って仕事をするAさんの行動が、時間を気にせず働く社員たちへ悪影響を与えていると感じることもありました。ただ、Aさんの気持ちをお聞きし、せっかく縁があってつながったのだから、何かうまくいく接点はないかを考えたかったのです。なかなかシステム系の人は採用できないですし、今後の事業展開で彼があそこなら生きるかもと思うこともありました。」とお話くださいました。

Aさんは、「仕事は仕方なくするものなので、定時で帰りたい。」とおっしゃっていましたが、本当はやりがいをもって働きたい、というお気持ちを心の奥に持っていらっしゃったのかもしれません。それを社長が支援してくださるのならば、今は仕事のやりがいはわからなくても、ここで働きたい、と思えたように感じました。

このように、会話される言葉には、表現されていない気持ちが含まれています。ときにはAさんのように矛盾するときもあり、本人も心の奥の気持ちに気づいていないときがよくあります。じっくり寄り添う対話がなされたとき、心の奥に思っている本当の思いが出てくるのです。私たちが行うキャリアカウンセリングも、そのような本当の思いに気づくための時間です。しかし、社外の私たちのキャリアカウンセリングでは、今回のケースのように、「この人が見ていてくれるならやってみよう。」というようなところにまでは踏み込めません。上司がこの社長のような関わりをしてくれることで、また頑張ろうという若者がふえるのではないか、と思った事例でした。

そんな関わりが少しでも増えるよう、10月には、コーチングをベースとした「部下を育てる。指導力アップ研修」を東・中・南予で行います。こちらは30名定員のところを、42名に増やしても3会場キャンセル待ちの大人気です。会員様限定の出前講座でもコーチングを扱っていますので、ぜひご活用ください。

 

~若者を育てる 大人が変わる~
ジョブカフェ愛work(愛媛県若年者就職支援センター)
キャリアコンサルタント 寺尾 真奈美

2016年10月27日更新 | カテゴリー:企業のみなさま, 愛媛の経済サイト E4, 教育機関・保護者のみなさま